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沖田総司side



「香耶さんと近藤さんが処刑された……?」

信じられるはずもなかった。



僕と山南さんが、敵の目をかいくぐり、やっとのことでたどり着いた板橋刑場。
そこは何者かの襲撃があったばかりで建物も人も荒れていた。

「いえ。仮に処刑されたのなら首がさらされる……はず」

山南さんも自信はなさそう。
だけど、その言葉が、発狂でもしそうな僕の精神を、かろうじて支えていた。

「きっと……ぜったい、生きてる」



戦いのあったとされる場所には、血痕と弾丸の痕があった。

「銀弾が打ち込まれていますね」

資材に残された銃痕に手を触れ、山南さんが呟く。
銀の弾丸が持ち出されたということは、羅刹と新政府軍が戦ったということだ。

「香耶さんの血は……体温を失うと黄金に変わるはずだから、これは香耶さんの仕業じゃないのかな……?」

「香耶君は変若水を飲まされ羅刹となったのですよ? 今までの常識を当てはめることはもうできません」

「…………」



手詰まりだ。
近藤さんも、香耶さんも、安否がわからない。どうしたら……



「……もし」

山南さんが、考えの読めない目を僕に向ける。

「君が、綱道に変若水を飲まされ羅刹となったとします」

「僕が、羅刹に……?」

「綱道に閉じ込められ、身動きが取れない。しかしそんな時、新選組局長が新政府軍に捕まったという話を聞いたら、どうします?」

「それは……近藤さんを、助けに行こうと……」



すると思う。
たぶん、無謀でも、ここに乗り込んで、近藤さんを助けようとするだろう。



「おそらく香耶君にはそれが出来た。新政府軍側に香耶君の協力者がいれば、不可能ではない」

新政府軍側に協力者? そんな人間いるわけ……。
そこに来て僕ははっとする。

「鬼、なら……」

そう。人間じゃなく、鬼なら協力するかもしれない。

「あくまで私の、なんの根拠もない想像ですが」

「それは……でも、それでも、」

希望が、少し見えてきた。



「この先のことを考えるためには、我々は香耶君の目的を正確に把握しなければなりません」

「香耶さんの目的……? 新選組の誰も死なせないこと?」

「それだけではありません」

それだけじゃない?
……わからない。香耶さんは時々とても酔狂な行動をする人で。
誰かを助けるためなら、新選組や幕府……国さえも敵に回せると言い放つ。

「わかりませんか?」

山南さんは達観したように笑みを浮かべた。

「香耶君の目的は、」



──新選組の幕引きです。



僕は、目を見開いた。

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