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雪村千鶴side



冬の早朝。
屯所の一室。

イラついた様子の土方さんが、腕を組み、眉間にしわを寄せている。
その向かいで正座するのは、そっぽを向いた薫と、うつむいている……と見せかけ実はうとうとしている香耶さん。
そしてその周りを囲む、新選組幹部たち。ひとり隊を離れている斎藤さんはいないけれど。

……なんて異様な光景。



「なんでてめえがここにいる。南雲薫」

「香耶に養ってやるから来いって言われた」

「はぁあ!?」

微妙に違うと思うけど……でもここは確かに香耶さんに話をしてもらったほうがいい。薫の安全を保障してもらわなくちゃ。
沖田さんがむっすりと殺気を放っている。この空気で居眠りが出来る香耶さんを、ある意味尊敬する。

「香耶、起きやがれ!」

「くぴー…」

「香耶君? 起きなさい」

「はっ!! すみまふぇん!」

「おい、なんで山南さんだと素直に起きるんだ」

本能で逆らってはいけないと理解しているんだと思います。



「まぁいい。それより南雲薫をここで捕縛してもいいんだな」

「らめれすっ…えふん! 駄目です!! 薫君は私の味方になりました!」

「なんだと?」

ぴきりと土方さんの堪忍袋の緒が張り詰めたような気がする。

「だいたい、薫君が何したって言うのさ」

「三条制札事件で新選組の邪魔してくれたじゃねえか」

原田さんの言葉に、薫は無愛想に答えた。

「土佐藩の命だったから。俺だってこれでも一族を預かる頭領なんでね」

「ほらねー。薫君もやむを得ずだったんだよ」

「ふむ。身内の命をたてに取られ命令されては、仕方が無いな」

「近藤さん、あんた何言ってんだ。情で絆されないでくれ」

「助かるための虚言だって可能性もあるぜ」

「だとしたらこんなところまでのこのこやってこないよ」

このままでは水掛け論だ。
薫を信じるか信じないか。

私は、薫を信じたい。あの時薫が香耶さんに言ったことは真実だと思う。

香耶さんのそばにいたいって。
香耶さんに死なないで欲しいって。

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