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沖田総司side



最近、僕は絶好調だ。

「香耶さーん♪ 開けるよ」

巡察帰りに買ってきたお菓子を手に、上機嫌で香耶さんの部屋のふすまを開ける。
しかし部屋の中の光景を見て、僕は刀を抜くことになるのだった。



『うわぁ!? いきなり何するんですか、沖田さん!!』

僕は抜き打ちにゼロ君の首めがけて薙いだ。
……避けられたか。

「ちっ…………ごめんね。つい」

『今舌打ちしましたよね!? 絶対殺る気だったでしょ! 現在進行形で殺る気でしょ!』

そこにいたのは、黒髪に黒い羽織袴の優男。
……久しぶりに見る、人の姿のゼロ君だった。

そのゼロ君が、眠っている香耶さんを膝の上に乗っけて、髪を撫でてたら……
僕に殺意が芽生えるのは当然だよね。

「ねえ、いつまで抱いてるの。返しなよ」

『刀を仕舞ってくださいよ。じゃなきゃ渡せません』

「僕が香耶さんに怪我させるとでも?」

『僕は自分が心配なんです!』

簡単に死ぬような生き物じゃないくせに。
僕はしぶしぶ刀を鞘に戻した。
するとちょうど、香耶さんがもぞもぞと目を覚ます。

「ぁ……ぜろ…ひさしぶり」

『はぁ。お久しぶりです。毎日会ってますけどね』

「……もどっちゃったのかぁ」

『なんですか。その戻って欲しくなかったみたいな態度。僕は万歳ですよ。何しろあの姿のままでは、もう香耶さんに膝枕もしてあげられませんしね』

「待てこら。その言い方じゃ、私がいつもあんたに膝枕してもらってたみたいじゃないか」

『何言ってるんです。僕は香耶さんが寝てる間に、膝枕どころかもっとすごい…』


ひやり。


横から首筋に刃を当てられて、ゼロ君は言葉を切った。

『……沖田さん、せっかく片付けたのにまた出したんですか?』

「いいじゃない。ねえ、そんなことより香耶さんが寝てる間に、もっとすごい…何したの?」

『えっと…』

「はぁ…総司君、片付けなさい」

『香耶さんっ』

「ゼロを」

「りょーかい」

『ええええ!?』

僕が一番警戒しなきゃならないのは、実は土方さんでも、山南さんでも、風間でもなく、こいつなのかもしれない。




二人してお茶をすすりながら縁側に座ってると、なんだか夫婦になったみたい。もう夫婦みたいなものだけど。

「おいしいね。この甘納豆」

「うん」

香耶さんは、その小さな口に小豆の甘納豆を二、三粒、口に含んではもくもくと噛み締める。
その様子がなんだか可愛くて、僕はずっとにやにやしながら香耶さんばっかり見つめていた。

ちなみにゼロ君は、

『出てってやりますぅ! 香耶さんなんか、僕のことが心配で夜も眠れなくなればいいんです!』

と言い捨ててどこかに行ってしまった。

まあ、彼のあれは、今に始まったことじゃないからいいけど。



「ふぁ…」

香耶さんは別の理由で、夜 満足に眠れていない。
僕が毎日遅くまで寝かさないからね。

「眠い?」

「む、ぅ」

僕は彼女の肩を抱いて、そっとその身体を倒した。

「……ひざまくら?」

「…してあげる」

見上げる香耶さんの髪を撫でて、僕はにこりとほほ笑んだ。
彼女は僕の膝にしがみつくみたいに頭を置いて、うとうとと気持ちよさそうに瞳を閉じる。

「巡察…どうだった?」

「今日は何も。強いて言うなら伊東さんが怪しい動きをしてるくらいかな」

「そう……」

伊東さん、と聞くと、香耶さんは少し顔をしかめる。

「へーすけ君は……」

「え?」

「………すー」

彼女は何かを言いかけて、眠りについてしまった。

「……なんで今平助君の名前が出てきたの」

僕といるときに他の男の名前を呼ばないでって言ったのに。
僕はしばらく悶々と考え込むことになった。



「総司! おまえ報告行けよな。俺まで土方さんに怒られるじゃんか!」

「平助君……なんだかむしゃくしゃするから斬られてくれない?」

「なんでだよ!?」

香耶さんの一挙一動に振り回される。
それも悪くないけどね。

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