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月神香耶side



総司君の部屋に、また戻ってきた。

「総司君……あの、さっきは」

「ごめんなさい」

言おうとしていたセリフをとられた。



「酷いこと言って。あんなこと本気で思ってるわけじゃなかったのに」

言いながら彼は、そっと私の首筋の痕を撫でる。



「傷つけて……ごめん」

私の身体を引き寄せて、強く抱きしめた。



「だから、だから僕のこと捨てないで」

「なんだその短絡的思考」

私は、彼を慰めるみたいに、背中をぽんぽんと叩いた。

「……君の次がいると思ってるの? 総司君の代わりなんかいないよ」

「うん…」

「私が好きなのは君だけだ」

「……うん」

私は腕に力をこめて、彼を抱き返した。



「ありがとう……香耶さん……」

総司君は、ほっと息を吐いた。



そして彼は、そのまま私の身体を持ち上げて。

「……さて、それじゃあ」

畳にゆっくり転がした。

……あれ?



「今度こそ、いいよね?」

「え…あ!?」

総司君は、何事も無かったような笑顔でそう言った。

「だって土方さんの服でしょ、これ。こんなの早く脱がせたい」

「……はぁ」

私は押し倒されたまま、呆れ果てて嘆息した。
なんだよ、この変わり身の早さは。

とにかく私は、とうとう腹をくくらなきゃならないらしい。



その日は午後から翌朝まで、私は総司君の部屋から出ることができなかった。
そしてその後の数日間、屯所では、異様に上機嫌な総司君が目撃されることになるのだった。

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