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沖田総司side




僕は全力で走った。
だって、あのひとときたら、ほんとすぐ無茶をするから。



香耶さんたちが、島原の揚屋に詰めて、一日目。
早くも香耶さんから文が来た。
……けど読めたものじゃなかった。

彼女の字は全然上達してなかったな。芸術的ともいえる下手さ。山南さんに習い始めて一年以上たってるはずなのに。
山南さんに解読してもらってやっと内容を理解した。
こんなことなら僕も教えておけばよかったよ。

とにかく、香耶さんからはじめてもらった文の内容は、こうだ。



『やあ総司君。しっかり隊務に励んでいるかな?

君に文を書くなんて初めてで、ちょっと緊張するな。初めての文が業務連絡なんて風情が無いよね。恋文でも送っておけばよかったかな。
島原はやっぱり疲れるよ。着物が重くて。それに作り笑いも限界があるよね。

千のにらんだ通り、やっぱり角屋には西国訛りの浪士が団体で詰めかけている様子。
近々なんかしでかすかも。こっちには護衛組の一君と烝君もいるし、大事になっても大丈夫だとは思うけどね。

でも君が、嫌な予感がするって言うなら、私は君を信じて頼ろう。総司君。私が無茶する前に、はやく来て。

月神香耶』



「香耶さん……」

恋文じゃなくたって、君の手紙がこんなに嬉しい。
……余計な男の名前も入ってるけど。

かくして僕は、手紙を持って屯所を飛び出したのだった。

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