■真事様より(相互記念小説/『合体の理由』イリアステル編)
真事様より(相互記念小説/『合体の理由』イリアステル編)

『合体の理由』イリアステル編
ゾーンはアポリアの絶望を三つに分けて、ルチアーノ、プラシド、ホセを作った。
しかし、そこには一つ大きな問題があったようだ…。


「何だこれは」
彼女を失った絶望として再誕したばかりのプラシドはD・ホイールを睨(にら)みつけた。
「何って…これはD・ホイールだよ。あれ、プラシドはゾーンから何も聞いてないの?」
「D…ホメロス…?」
「プラシド、D・ホイールだ。ホメロスは古代ギリシャの詩人だ」
ホセに注意をされても、プラシドは疑問の表情のままだった。
「え…まさか記憶に障害が発生したとか? ちょー最悪じゃん!」
「こうなったら、一から教えなくてはいけないな」
「え?」

そんなこんなでプラシドのD・ホイール特訓の日々が始まるのだった…。


数日後。
「うぉぉぉおー!!」
勢いよくプラシドはカラーコーンにぶつかりながらD・ホイールで走り抜ける。
「ちげーよ! 何で曲がろうとしないんだよ!」
「俺の意志をこんな赤いとんがりコーンのために曲げる訳にはいかん!」
「何でそんなとこで頑固になんだよ! それからとんがりコーンじゃないから! カラーコーンだから!!」
一応路面を走れるぐらいにまで成長したプラシドだが、未だに曲がることだけは何故か無理なようだった。
「ったく…カラーコーンじゃなくて壁だったらどーすんだよ!」
「壁? そんな壁など俺が突進してぶち壊してやる」
「闘牛じゃあるまいし、ぺしゃんこになるだろ!」
「何がだ」
「プラシドとD・ホイールに決まってるだろ!」
厳しい教官ルチアーノですら、プラシドの変に頑固なところにはお手上げ寸前だった。
その様子をホセはホットの『お〜いお茶』を飲みながら、黙って見つめていた。
「ねぇ、ホセもプラシドに何か言ってやってよ! 駄目だよこいつ! こんなんじゃシグナー倒せないどころか下っ端以下だよ!」
「なに…焦ることはない」
もぐもぐとお茶菓子をホセは頬張る。
「むっ…このお茶菓子…旨いな」
「『むっ…このお茶菓子…旨いな』じゃねーよ! あーこれだからジジィは! もうプラシドの教官は僕だけでいい! プラシド、続きやる…」
ルチアーノがプラシドの方に視線を戻した時、プラシドは壁にぶつかってぺしゃんこに近い状態になっていた。
「ル、ルチアーノ…」
「もうこんな奴やだぁぁあー!!」


それから数日後。
ようやくプラシドは角も曲がれるようになった。
ただ、曲がれるようになった代わりに…。
「うぉぉぉおー!!」
曲がった後、必ずD・ホイールからかっとビングしてしまういらないことが増えてしまった。
「何で角曲がった後、D・ホイールから吹っ飛んじゃうんだよ…」
「うむ…しっかり座っていないからではないか?」
相も変わらずホセは『十六茶』を飲みながらお茶菓子を食べていた。
「いや…ちゃんと座ってはいるんだけど…」
「うぉぉぉおー!!」
「何故かああなってしまう、と」
「そーなんだよ。一体どうすれば…」
「ならD・ホイールと“合体”すれば良いのではないか」
暫(しば)し沈黙しルチアーノは、おぉっと叫ぶ。
「それだー! おいプラシド、合体だってさ、合体」
「何だルチアーノ、俺は今角を曲がる練習でいそが」
一瞬、余所見運転をしてしまったプラシドは、再び宙を舞う。


更にそれから数日後。
遂にプラシドは完全にD・ホイールを乗りこなせるようになった。
但し、D・ホイールと合体しての話だが。
今日はD・ホイールと全く合体をしないでの最終試験。
高速ビルの上からルチアーノとホセは、プラシドの最終試験の様子を見守る。
「さて…お手並み拝見と行くか」
「ところでホセ、その横にいる犬は何なんだよ」
「こいつか? こいつは“ホー次郎”だ」
「ホー次郎マジで飼ってたのかよ!」
「ん…プラシドが動き出したぞ」
ホセがホー次郎を撫でていると、プラシドが自身のD・ホイール『Tー666』に乗り快調に走り出した。
「ここまで来るのにどれだけ苦労したことか…」
「全くだな」
「あんたはお茶菓子食べるかお茶飲んでることしかしなかっただろ」
「やれやれ…まだまだ子供だな。大人の世界はこんなものではないぞ」
「そんな話してねーだろ!」
「む…あれはトラックか?」
「えっ」
ルチアーノとホセがプラシドの走るずっと先の方を見ると、プラシドに向かって走るトラックの姿が。
「あいつ反対走ってんのかよ!! おい気付け!!」
「通信を使ってあれ程忠告をしたというのに…プラシドめ、私の言うことは聞かんと言って通信を遮断した」
「プラシドが逆に走ってんのは、あんたが原因かよ!」
そう二人が喚(わめ)いている最中、プラシドは快調に走り続けていた。
「ふ…俺もやればできるではないか」
完全にプラシドは自己満足状態に陥っていた。
そのため、トラックに何度もクラクションを鳴らされてもプラシドは気付くことなく、D・ホイールと共に宙を舞った。
「ははははははー! 遂に俺も…あれ、空を飛んでいるぞ。そうか、俺は鳥になったんだな。はははははーっ!!」
しかし、いつもと違いプラシドは笑っていた。楽しそうに。
そして、プラシドは再び地面に叩き落とされ、ぺしゃんこに近い状態となった。


後日、プラシドとD・ホイールの修理代でゾーンは悩むのであったとさ。


FIN…


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