君に降り注ぐ花降らしの雨
  



(牧場物語/ナディ)


「ドワァッ?!」朝目が覚めて、名前が隣に居ることに未だに慣れないオレがいる。今日も奇声をあげてしまったが、眠りの妨げだと言わんばかりに名前は寝転がり、寝相を変えた。すまない!と思う反面、肌蹴たパジャマから色香を感じてしまって、いけないけない、新婚早々そんなことと頭をぶんぶんと横に振って、傍から見れば奇人、変人の近寄ってはいけないよと幼子に言いつける母親の姿が目に入った。そういえば、この部屋にもまだ慣れないなァ。何せ、名前のいい匂いがするし。オレもそれなりに気は使っているが、女?に好かれようとか思ったことは無かった。オレは無愛想だし、何より怖いと思われることが大半だったから。



なのに、コイツは違った。ただ、一人、オレそのものを見てくれる存在。俺が、青汁が好きだと知ればそれを持ってきてお話しようよと、語りかけてくる。次第に氷漬けのような心は溶けていく、春がやってきた。オレはコイツに恋をしていた。恋人のに成る時も、結婚するときに言ったプロポーズの言葉も今思い出せば赤面してしまうが、このあどけない寝顔を見ていると忘れてしまって、その寝顔にキスをして、普段、たまにしか言ってやらない「愛シテイル」の言葉を口にする。たまーに言ってやるが、コイツはすぐに調子に乗る。もう一回!もう一回だけ言って!って何度もせがんでくる。目をキラキラと蛍光灯、または太陽、宝石の様に輝かせて。結局、俺が折れてまた、愛している。と口にする。



子供は欲しいか?と聞かれたら答えはイエスだ。だが、名前がまだ早いよと苦笑して、それに家ももっと広くしなければと現実を見つめていた。だが、もしも、子供が出来たらオレに似ないで元気で活発で明るい子でもっというなら他人を思いやれる子がいい。元気なら男でも女でも構わない。さっきの奇声から、三分くらい経って、名前が目をまだ眠たそうに擦って起きた。「お早う、ナディ。いつも私より早いね」「アア、オハヨウ、まだ眠いカ?」「ううん、牧場の事もあるし起きなきゃ」んーっと伸びをしてクローゼットで着替える。彼女の牧場でのお仕事の始まりだ。まさか、いつも早く起きているのが、名前の寝顔を少しでも見ていたいだなんて、口が鋏でずたずたに引き裂かれようが言えるわけがない。



と言うか、最近夜も眠れないんだが。傍に名前が居ると思うと、動悸が激しくなり、ああ、結婚したから早く慣れろだとか。プロポーズしたのはオレだろ!とか情けない気持ちで一杯なのだが、仕方ないんだ!今日も悶々と眠れない日々がやってくるのだろうな。「ふわあ……」大きな欠伸が一つ出てきた。朝食の担当は今日は名前だ。名前は世界一の嫁だ。飯は美味しいし、優しいし、一緒に居てとても安らぐ。欠伸をしたのが名前にも伝わったらしい。「大きな欠伸。寝不足?ベッドがあれなら、私作り替えるけど?」「いや、いいんダ」これは自分の問題、だから……な。


Title リコリスの花束を

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