神童




ハロウィンというのは元々仮装して、お菓子を貰うという子供たちのイベントなのだ。私たちも一応子供と言う分類ではあるけれどもそろそろ、お菓子をくださいな。なんて言える年齢に達している……というより超越しているような気すらもするのだ。寧ろあげる側に周るんじゃないだろうか。それでも神童の持ってくるお菓子は高いから、たからないわけにはいかない。ファンの子にしてみればこんな邪な女子はいてはならない許されない存在だろう。だけど、この誘惑に抗える人と言うのは高潔な人物だと思う、少なくとも私は無理であるけれども。あんなお菓子、一般人では中々食べられる機会が無いんだぞ?!「神童トリート!」「お菓子のみ所望?!」後ろから抱き着かん勢いでお菓子の要求をしてみたら突っ込まれた。まあ、当然か。



「まあ、こんなことは予測済みですよ名前さん」ほら、ね。貴女だけは必ずお菓子を所望してくるだろうと思って。そういって大きなスクール用の鞄から鞄のサイズぎりぎりのクッキーの缶を取り出して私に両手で差し出した。わぉ、本当にくれるなんて思ってもみなかった!「おおお!流石神童!わかっている」アームド、ミキシマックス、さらに読心術。此処まで来たら本当に神童ねと褒め称えていたところ、照れたような困ったような笑顔を浮かべた。私が褒め称えるのが余程珍しいらしくやや、気を良くしたようだった。こちらはただ、お菓子を強奪しているだけなのでとても申し訳が立たなくなりそうだというのにもかかわらず、彼の笑顔は太陽の如く赫奕としていた。



「ところでハロウィンですよね」「ハロウィンだね?」唐突にこの子は何を言い出すのだろうと思ってみていたら、不意に先ほどの太陽のような笑顔は消えて居たのに気が付いた。どんどんまずい方向へ向かっている、そんな嫌な気すらしたのだ。もしも、それが本当だとしたら私はどんな目に遭うのだろうか。一抹の不安。「トリックオアトリート。まさか、ただで俺から色々奪っていけると思っておいでですか?」冷ややかな笑顔に身も心も凍りそうだった。絶対に此処だけマイナスの気温です。私の状態を知ってか知らずか尚も話しかける。「俺は、お菓子をあげましたからねぇ……。俺はトリックの方を所望しますね」お菓子は家に帰ったらいくらでもありますから、そっちのほうが随分と俺に対して有益です。と囁きかけながら私の体を抱いた。



「ちょ、っと!こんなの聞いていないよ!」そうだ、これは想定外の出来事で所謂ハプニングなのだ。だから、私は神童の体を突き飛ばそうともしたのだが、手には未だに抱えられている大きな缶がそれを許してくれなかった。「俺、名前さんが好きですよ。お菓子とかそういうのばかり狙いにくるけれど、俺の見てくれや金に目が眩まない純粋な貴女を愛している」だから、それも名前さんの為だけに用意しておいたんです。最初から私は彼の策の中の一部だったらしい。「そんなことないよ。皆が皆見てくれや、お金なんかじゃ」「それでも」それきり、もう何も言わなかった。言わなかったじゃなくて、塞がれてしまって言えなかったの方が日本語としては正しいか。「貴女が好きなんですよ」



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