星降




香宮夜は今年も凄いなぁ、イケメンアップの力は本当絶大なんだな。教室の隅でポツンと凄まじい光景を頬杖ついて眺めていたら香宮夜と目があった。若干の疲労が見えるが、非モテの男子たちの苦労とそれはどちらが上なのか私にはわからない。大体サッカー部と言うだけでもモテるのに、更にプラスで格好いいのだから神様は不公平だと思う。それでもって、その人の彼女が私となるのだから世の中わからない。見ていて気持ちのいいものでもない上、煩いし騒動が収まるまで、購買でお茶でも買って過ごしていようかなと思い席を立つ。



今、天河原でプチブームを起こしていると噂のお茶を購入して購買近くのベンチに腰掛けた。ブームを起こしているというだけあってやはり美味しい。万人受けする味がする。
「……名前、こんなところにいた」
後ろから困憊しきった香宮夜の手が伸びてきて、私の飲みかけの(まだ、一口二口しか飲んでいない)お茶を奪い取った。どうやら、香宮夜は私を探していた模様。
「はぁ……疲れた。俺には彼女が居るって言っても聞いてくれないし、本当疲れた」
モテない男子からしてみれば嫌味のようにも聞こえるが、あの状況を見ていれば見ている方も疲れてしまう。ので、香宮夜をいたわるように「お疲れ様」とだけ言った。
「そうじゃなくて、もっと言うことないの?」



香宮夜がムッとした様子のまま口を尖らせている。もっと、言うこと?首を捻って絞り出す。
「……モテモテで羨ましいなーとか?」
「いや……全然違うから。他の女子の受け取っちゃ嫌だ、みたいなのは無いの?何とも思わないの?」
不服そうに軽くなったお茶を返してくれた。量が半分ほどに減っていたが、気にせずにキャップを閉める。
「んー、でも香宮夜がモテるのは知っているし。香宮夜そういう束縛みたいなの嫌いじゃん」
事実を述べると香宮夜が僅かに顔を顰めた。本当はあの場に居るのが嫌で抜け出したんだけど、香宮夜に言うのはお門違いだと思った。香宮夜は悪くはない。
「……まったく嫉妬されないと傷つくんだけど。まあ、だけど概ねあっている。前はそうだった。けど……名前が俺を変えたんだ、そういうの面倒くさいって思っていたけど、今ならわかる」
「本当?あんまりそういうこと言うと大変だよ。私、嫉妬していないわけじゃないから」
香宮夜が目を円らかにしたあとにふっ、といつものように余裕たっぷりの笑顔を浮かべた。




 戻る 


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -