光良




「ケーキ食べたい!」
外でご飯を食べて遊んだ帰り道に急に夜桜が「そう!甘い物食べたいの!あはははははっ!」と笑い出したのに名前は僅かに苦笑した。夜桜は急に突発的に思いつきで行動したりするところがあるので、よく振り回されているのだがそれは今日も例外じゃないらしい。長めのマフラーを冷たい風に靡かせる。
「いこ?名前にも買ってあげるから!ふふふー俺ねー苺が沢山乗った奴食べたい!」
手袋をしていない、冷たい手を名前に絡ませてケーキ屋があるであろう方角へ方向転換する。人をうまい具合に避けながら歩いていくと、綺麗な装飾のなされたツリーが二人の目に入った。



夜桜がピタリと歩みを止めて、その場に一度立ち止まった後にツリーに近づき見上げる。
「あははー、きれーい!」
「本当だね」
周りの人は殆ど、カップルばかりで名前が苦笑した。ああ、やっぱりこの季節のせいもあるのだろうけれど、少しだけ気恥ずかしくなって俯いた。チカチカ点滅しているライトが顔を照らす。夜桜があたりを少しだけ見回して、空いているベンチに腰かけた。
「クリスマスって感じだな!こういう装飾とかの見ていると楽しくなる」
「そうだねー」
「独り身の奴とかは爆発しろとか中止とかいうけど、俺は割と好きだよ、あははは。美味しい物食べられるしー、こうやって名前といられるし、良いこと尽くめだろ」



はあ、と白い息を吐くと上空へ登っていく。騒がしい音が聞こえる。夜桜が冷たくなりつつある体を温めるように名前に寄り添う。冬の夜は着実に体温を奪っていく。
「あはっ、でもさむーい。ほら、息白い」
白い息が面白いのか、大きく吐いてキャッキャッとはしゃぎながら目を細めた。夜桜の仕草が愛らしく感じて名前が口元を緩めた。
「今日は家に帰ってもずっと一緒に居られるからうれしーよ!でも、ケーキ買ってもう家に帰りたい」
「……うん、寒いしね」
夜桜に同意するように頷くと夜桜が、首を横に振った。
「んーん。名前ここでキスとかすると絶対怒るから、さっさと家に帰ろうと思って!」



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