サル




サルはぶっ壊れている。シモ方向に。


真顔でサルが言いだすことには概ね同意だなと名前は思っていた。勿論、概ねであるし、後半はとても同意しかねる。サルが言っているのはどうやら、古い風習のハロウィンと言う奴らしいのだが、これが中々にユニークなのだ。子供たちが、お化けなどに扮してトリックオアトリート!とお決まりの言葉をいい、お菓子を貰うというイベントだとか。「素敵な風習だよね」「うん」なんで廃れてしまったのか僕は疑問だよとサルが難しい顔をしたまま、腕を組んだので名前も同じように腕を組んでみた。「因みに、ハロウィンは今日らしいよ」「へぇ」では、お菓子でも用意してくれているんだろうかと、名前が期待に胸を躍らしたところで、僕は残念ながらつい先日、知ったばかりだから何も用意していないけど、期待をさせてごめんねと先に希望を打ち砕いた。



「じゃあ、どうして急に?」「いや、僕はね。仮装とかそういう素敵な文化が廃れてしまったのがとても惜しいと思うんだよね。僕はねぇ、見たかったなぁ……。名前の仮装姿」ニヤニヤと何を想像しているのだかわからないが、口元をにやつかせた。抑えきれないらしい。「ミイラとかは微妙かなーと思ったけどさ、素肌に巻けば中々いいと思うし。魔女だって、フリフリのついた飛び切り可愛いものならいいよね。ああ、でも獣耳という点だったら狼男だって捨て難いしなぁ」兎に角わかるのは、想像の中の名前がとんでもない姿にさせられているだろうというところである。だらし無くしまりのない顔に成ってきて、鼻の下が伸びてきているのが証拠だ。はぁと呆れたように溜息を一度ついて、組んでいた手を額に当てた。呆れているという仕草であった。サルの想像していることを覗こうと思えば、名前にはできた。名前にはそういう力が備わっていたからである。



「何を考えているんだか……敢えて見ないけど。見たくないし」「別にいいじゃないか、名前に何の損害があるんだい?想像の中で汚すくらい許してほしいね」「あるよ。少なくとも本人を目の前にして、卑猥なことを考えるのはやめてほしい、とっても不愉快だよ、変質者か」だって、ろくでもない事でしょう。と言うとサルがまた、真顔に戻った。「ろくでもない?男ならばロマンだと思うよ。好きな子がコスプレをして、おねだりだなんて素敵じゃないか」「そもそもコスプレじゃないからね。仮装だからね!」「似たようなものだろう?!あーあー、きっと昔の人たちはこの日にコスプレして楽しい事をしたんだろうなあー」僕は生まれるのが早すぎたよ、僕だって楽しい事をする権利があるはずなのにと本気で嘆息するので益々名前は渋い顔をした。「そんなの一部の変態さんだけだよ。趣旨がずれてきているじゃない。仮装して、お菓子を貰うイベントでしょう?何で私がコスプレをしてサルにおねだりなんかしなきゃいけないの」それじゃあ、新しいイベントじゃないか。



「まあまあ、どうでもいいじゃない。名前は早く、素敵な衣装に着替えて僕を楽しませるべきだ。そうだろう?僕は皇帝だよ?」「何でも思い通りに成ると思うなよ」「あー、そうかいそうかい。そんなこと言っていいと思っているわけ?それともあれか、僕に着替えを手伝ってもらいたいの?そんなに言うなら僕が無理やりにでも着替えさせてあげるよ」手がそうやって、胸に伸びてきたので名前は乱暴にそれを叩き落として回避した。どさくさに紛れて色々な所を触る気満々である。名前がわかったわかった、自分で着替えるからサルは自分の部屋で待っていてくれと折れるまで、あと少しかかりそうだ。


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