龍崎+逸見




逸見君は、吹っ切れたようです。相変わらず下ネタがちょこっと。


「トリックオアトリート!お菓子を貰いに来たぞ!」逸見がわざわざ二年の教室にやってきて苗字と龍崎に両手を一杯に開いた。一応、わかりにくいが文化祭で使ったのだろう百均で売られていそうな猫耳を付けているようである。「……、」「名前……その目は、やめてさしあげろ。こっちが居た堪れなくなる」苗字の冷たい視線と同様に龍崎も引いているらしいが、無言の苗字よりは対応が生暖かい。「なんだよ!折角、文化祭が終わってこれ捨てるっていうから再利用してやったのに」どうやら、この猫耳は捨てられるはずのものだったらしく、逸見が口を尖らせていた。



「似合ってないから、つい……。御門がそれを付けて、お菓子欲しいにゃんとか言ってきたら今すぐにでも購買に走って買ってきてやるよ。な、名前」「……俺じゃ不服かよ」「そんな壊れた御門さん私は嫌だけど、逸見にですらこんなにドン引いているのに」あんな厳つい大男が猫耳とかきつい。という正論を突き出せば言った張本人もまぁ、きついよな……と認めた。苗字も龍崎もあの堅物がそんなことをするとは想像出来なかったようだ。逸見はやはり不服そうだった。「なんだよなんだよ、ノリが悪いな。お菓子よこせよ!」「却下だ。何であんたは先輩にたかるんだよ」「まぁまぁ、無いなら悪戯ってことに成るけどいいな?」嫌な予感するから俺はお菓子にしておくと龍崎が机から適当に小さな四角いチョコレートを三つ差し出した。逸見が最初からあるなら出せよなーと文句を垂れながらも受け取った。龍崎はしかめっ面をしていたが、あまり強くは言わなかった。「逸見の分際で、」



「ま、龍崎だからな。俺は期待していなかった。それに、本命は……名前先輩だし」龍崎からなんて、お菓子を強奪できればそれでよかったんだしと言っている。お前は賊か何かかと龍崎が凄んで、いら立ちを露わにすれば逸見は鼻で笑ってそれを華麗にスルーした。「名前先輩、トリックオアトリート」妙な猫なで声で優しげな何処か企み、裏があるような声であった。ぞわぞわと背筋や腕が粟立っていった。大五感がこれは危ないと警鐘を鳴らしているのだ。苗字はこの感を信じて龍崎に助けを求めた。「……龍崎、私、お菓子持っていないんだけどどうしたらいい?」こそっと耳打ちをすると龍崎が呆れたように、まだ手元に残っていたチロルチョコを受け渡そうとした。それを逸見が素早く察知して阻止する。「俺は先輩に言っているんだ、龍崎、邪魔はさせないぞ」「なんだよ、邪魔って。お菓子が欲しいんだろう。やるからさっさと自分の教室に帰れよ餓鬼」



不敵な笑みを浮かべた逸見が苗字の腕を掴んで自分の方へと引き寄せていく。龍崎が慌てて引きずり込まれない様に、苗字の空いている左腕を掴んでそれを何とか阻止した。あと一歩、遅ければ苗字は腕の中に閉じ込められていただろう。危機一髪と言う奴だ。「何をするんだ!」「煩いぞ、龍崎。悪戯と言えば性的な悪戯に決まっているだろう!」「嘘おお!怖いよ!龍崎たすけてー!お菓子を持っていないって言うだけで、後輩に性的な悪戯されちゃう!」「この馬鹿逸見め!」性的な悪戯と聞いて、余計に龍崎は苗字を救出しようと奮起した。必死に抵抗をしていた龍崎だが、少しして動きが少しだけ止まった。「因みに俺への悪戯……は、性的ではないだろうな。ゾッとする。悍ましい」「当たり前だ、きしょくわりぃ。お前への悪戯は練り山葵をチューブ一本丸ごとドリンクに混ぜることだ」「なんだ、その陰湿な嫌がらせは!そういうのは悪戯っていうんじゃない!ただただ陰湿な嫌がらせじゃないか!罰ゲームだろ!」チョコを持っていてよかった、チロルチョコ。知らなかったらそのままがぶがぶと喉に通す所だったと龍崎が顔を青ざめた。



「逸見、外周はまだまだ終わっていないぞ」御門の声がグラウンドに響いた。低音のそれは、よくグラウンドに響きやすい。慣れはいつも声を出している証拠だ。あの後、必死に攻防しているところを誰かが密告したらしく、ばれた逸見が一人で目が回りそうな数の外周をさせられる羽目に成ったらしい。御門いわく、不純だ!だそう。



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