とりっぷ!




世界は奇妙な事ばかりがある。どうにも、これも奇妙な現象の一つの様で、例の関興がやってきた、世界に私は関興と共に光に包まれてやってきてしまった。関興だけなら兎も角、私はこの時代を生きて行ける自信がまるでない。生存本能に従って関興についていけば、大きな城が見えてきて、もう目の前がくらくらしてきて、否が応でもこの状況を受け入れなければならなく成ってきたようである。「大丈夫、……私が居るから」何があっても、大丈夫だから私が守るからと握りしめられた手の平が大きく骨ばっていて、ああ、武人の手つきで、男の人なんだな、って嫌でも思い知らされた。そして、城の兵に声をかけると最初はその服装に戸惑ったようだったが(家に居た時と同じもので甲冑ではなかったためだ)関興だと知るとすぐさま儀礼的な礼をして、中に通した。



「わぁ……、なんか凄い」「……父上と兄上にも紹介、したい。名前の事」……紹介?紹介ってことは、もうお付き合いしていて結婚を前提にしています〜って感じじゃないか。そんなんじゃないぞ!そんなんじゃ!って思ったんだけど、関興のぽんやりした雰囲気が放っておけなくてちょっと流されそうに成る。がいかんいかん、こんなわけのわからない未知の土地で一生を終えるなんて!と回廊に丁度大きな、影を作った時に関興が「父上……」と呟き一礼したのを見て私も慌てて頭を下げた。朗らかなだけど厳かな声が頭上に降ってきた。「はっはっは、関興。お前ももうそのような年か。顔をあげて、よく見せてみなさい」そう言われて、許されたと思い顔を上げると長い手入れされた綺麗な髭と長身に目が行った。「……」あまりの迫力に声も出せずにいた。「ほう、関興には勿体ないくらいだ。で、婚儀はいつ」「あ、あの、信じて貰えないと思いますが……!」婚儀は流石にまずいと思って言葉を遮らせていただいた。そして顛末を話す。



「さすれば、この御嬢さんは未来からやってきた、と?」用意されたお茶を啜りながら、はいと答える。でも隣に座っている関興はぽんやりしていて、聞いているのだか、聞いていないのだかわからない。しかし、急に意識が覚醒したように二酸化炭素を吐きだした。「……、名前、帰る方法もわからない。これも、運命。……私は、貴女を、愛している。……私と契りを交わしてほしい」真剣な様子の関興と関羽さんに私の肩身はドンドン狭くなっていく。え、いつから、私の事そんな目で見ていたの?と問いかければ、公園で見かけたあの日からと臆面なく言われて、マジかよ!って成って雛鳥か何かかと思った。「うむ、関興にもこんなにしっかりした御嬢さんが居れば安心だ」と長い髭を撫で付けて関羽さんが立ち上がった。「婚儀は近いうちに行おう」……もうどうにでもなぁれ。


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