逆とりっぷ!




人とは生きている間に沢山の段階を踏むというらしい。まず、新しい物に触れるとき、その新しい物が全てが全て物珍しくて好奇心に満ち溢れる。その二に、不満。今まで出来ていたことが出来なくなったことへの不満、葛藤。そして、未知の物への恐怖、嫌悪感。三段階目、そこの住人に成ると、何かのテレビの番組で見た気がするが、まさにその段階を踏んでやってきたのがこの関興と言う男である。まず、この男は現代の男ではない。なんと、この男三国志に登場する、関羽の息子だというじゃないか。たまたま、此処へ来たのにはわけがあって、私の近所の道端でコスプレした変な人が刃物を持って出没しているので注意してくださいという警告が出ていたのが発端だった。そして、その男、関興と出会ったのが公園のベンチだ。ぽんやり夕日をバックに腰を掛けていた。私は通報しようと、スマホを片手にそっと息を殺したのだが、どうもそいつは武芸に富んでいたようで、直ぐに私の気配に気が付いて眠そうな声で、囁きかけてきたのだ。「何……しようと、しているの?」って。



私は驚き慌ててしまって、スマホを地面に思いきり落としてしまった。そこからは関興のターンだった。グゥ、腹の音が鳴って関興がバッタリ倒れる様に私の方へと凭れ掛かってきたのだ。「お腹……空いた。もう、四日は食べていない……喉も、乾いた」刃物を持っているという事で警戒していたが、私に向けるわけでも無く戦意があるようには見えない。寧ろ助けを求めているように思えて、私は人助けをするつもりでそのコスプレ男、じゃなくて関興を家まで連れて行って、手料理を振る舞ったのだ。当初は戸惑いを覚えていた。「凄い……美味しい。貴女は……、いや、まずは、お礼からか。有難う」ご飯も食べさせたしそろそろ、警察に突き出そうかと思ったのだが、彼が言うには戦場から此処に来た経由がわからないらしく困っていると。ははぁん、私を騙そうって言う魂胆か?というか、知らない男を家にあげている時点で私ちょろい?



彼は関羽の息子の関興らしい。流石に劉備、曹操、孫権は授業で幼き頃にならったので知っているのだが、関羽……はて。三国志は真面目に聞いていなかったのであまりわからないが聞いたことはある。これが本当だとしたら、彼はタイムスリップしてきたという事に成る。仕方のないので、此処に居候させてあげることにする。「私はその他(人名等)名前、よろしくね」「うん、よろしく……」ぽんやりしているけど、本当に彼は関羽の息子なんだろうか?心配に成ってきた。翌日にコスプレ……基、その甲冑?は脱いでもらって、適当に見繕ってきた服を与えた。朝に剣の稽古をしていたのには驚いた。早朝だったので誰にもばれなかったのが唯一の救いではあるが、注意したら不満げに生気のない瞳で見つめてどうすればいいのか聞いて来たので筋トレとジョギングを教えたらその通りにした。



一週間もしないうちに、彼は私の料理や掃除の手伝いをするように成った。それがまるで空を飛ぶ前のひな鳥の様に可愛らしく(大人の男性に言うのもあれだけど可愛いのだ)真似をしてくる。「ふふっ……」「どうしたの、関興?」台所に二人で立っている途中、関興が急にふふっと笑い出したもので気に成って尋ねてみればいつもとなんら変わりようのない顔で「こうしていると、てれびと言う物で見た夫婦みたいだ……」こういってのけたのだからたまげた。更に追い打ち。「私の、妻……だったら、いいな、って思った。駄目……?」駄目なんていえるわけないじゃあないの。……本当に成人男性なのか、この生き物。


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