隣の席の関平君




体育の時間憂鬱だった。今日は特にやることも無く、男子女子混合のドッヂボールに成ってしまった。体育は昔から大嫌いで、やる気も無い事を先生に指摘されても、嫌な物は嫌だったので、いつも反抗的な態度を取っていた。本当は外野に回りたかったのだが、同じような考えを持つ女子とのじゃんけんに負けてしまい敢え無く、中に入ってしまったのだった。こちらのチームは隣の席の関平君という軍神(何でそう呼ばれているかは不明なのだがきっと凄い人なのだろう)の息子が居て、向こうが少しビビっていたが、陸遜くんや呂蒙君等が関平君を狙ってくる。何か昔に確執でもあったのではないのかというくらいの敵意なのだが、中々当てられないのでそろそろ白羽の矢が私に来そうなのだが。



そう思っていた矢先だった。陸遜君の投げたボールがこちらに投げつけられた。やはり弱い者から潰そうという思いなのだろう。って、このままだと顔面に当たるな。陸遜君は火を使う理科の実験等では楽しそうなのだが運動音痴だ。「危ない!」身構えるよりも先に関平君の逞しい背中が遮った。ボールは上手い事関平君の手の中に納まった。陸遜君の黒い笑みが見えた気がした。ついでに舌打ちも聞こえた気がしたが気のせいだという事にしておきたい。怖すぎる。「大丈夫か?陸遜殿!おなごの顔面を狙うのはどうかと思うぞ!」



そう大声で敵陣に言うと陸遜殿が「手元が狂っただけです!それに顔面ならセーフで彼女はこの場に残れたでしょう」「そういう問題ではない!彼女に傷が出来たらどうするのだ!拙者が居たから良かったものの」そこからは口論が長い事続いていたが、何故私の顔面如きでそこまで話が長引いたか分からずジャージから制服に着替えた後に星彩ちゃんに聞いてみた。「関平君なんか、凄い女子に優しいんだね」「……そうかしら」星彩ちゃんは冷たいようだけど実は優しい子だって、私知っている。こんな私の話相手にも成ってくれるし。星彩ちゃんは「関平は貴女の事を……いや、これは関平が言うべきことね」そう言って自分一人で納得していた。



よくわからないが、教室に戻った時に関平君に今日の事のお礼を言いながら苺牛乳を渡してみた。「い、いや。拙者は……そ、その……その他(人名等)殿が怪我をすると思うと居ても立ってもいられなくてだな……」「?」よくわからないが、関平君はとてもいい人の様だ。だから、関平君を慕う人や弟や、妹が懐いているのだろう。「はぁ」星彩ちゃんの溜息が何故か聞こえた。こちらの様子を伺っているようだった。関平君を見ている。関平君はうっと小さく呻いて、雨の中で放置されている子犬のような顔をしていた。それが何だか可愛くて、小さく笑ってしまった。その時だった小さな声で「せ、拙者は……拙者はだな……その他(人名等)殿が……その……お慕いしている」と聞こえたのは。


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