隣の席の姜維君




隣の席の姜維君は生徒会に入っている。忙しそうに、毎日図書室だの生徒会室だのいっていてまるで、雲の上の存在のようだ。そして、何故か諸葛亮先生の事を「丞相」と呼ぶ。意味は分からないけど尊敬しているらしい。実際に、二人の仲は良くて、諸葛亮先生が個別で姜維君に勉強を教えてあげている所を見たことがある。そして、今日は諸葛亮先生が出した宿題の赤点を取って、居残りをさせられている。姜維君に失望されても不思議ではないこの状況。誰も居ないし、もう何だよ皆、何が宿題全然できなかったーだ。居残りなんてやっていられねー!だ。私はそれでも居残るぞ。帰宅部員舐めるなよ。



時計の長い針が随分と移動したように思える。何度か鐘は鳴ったのを覚えている。ガラガラ、不意に教室のドアが開いた。誰だろう、こんな遅くまでと思っていたら姜維君が立っていて、私を見て怪訝そうな顔をした。「その他(人名等)さん、こんな遅くまでどうしたんですか?」「いや、諸葛亮先生の宿題の赤点取ったから居残り?」「!流石です!丞相の問題は難しくて逃げ出す者も多いと言うのにその他(人名等)さんは諦めずに居残り、それを解いているとは!」距離が近くなった。胸が高鳴る。長い髪の毛は束ねられていて、それが絹糸の様に美しい。顔のつくりも良く近くにいると心臓に悪い。



「丞相が居残りの人を帰すように言っていました。一緒に帰りましょう」「え?へ?」まさかの展開である。雲の上の存在が私等という下等な存在に対して一緒に帰ろうと誘ってくれているのだ。「いやいや、姜維君反対方向でしょう。私、一人で帰れるし……」そういうと姜維君が真顔というか、真剣な様子で「いいえ、そういうわけには……!最近は暗くなるのも早いですし、何より不審者が出ているとの情報が」断ろうと思ったのだが、姜維君はいつも真剣で真面目な人間だからきっとこの申し出も本気なのだろうと承諾した。



帰り道、丞相こと諸葛亮先生がいかに素晴らしいかを語られて困った。「本当凄いんだね、諸葛亮先生」「ええ!そうなんですよ!はっ、私としたことが……すみません。熱くなってしまって、面白くないですよね」「そ、そんなことはないよ。私にとって姜維君って隣の席だけど雲の上の存在だったから、こうして普通に話せて嬉しいよ、生徒会も忙しいんでしょう?」そう問い掛けると姜維君は「いいえ、そうでもないです。鍾会殿も頑張ってくれていますし……少々扱いに困りますが」と付け足したのを聞き逃さなかった。私はクスクスと笑うと「すみません、これは二人だけの秘密にしてくださいね」と言った。私は雲の上の存在だった姜維君が人間臭い所もあるんだな、って思ってうんと頷いた。二人の影法師を追いかける。


数日後(会話のみのおまけ)

「丞相、この間の宿題……あ、」「はい?(あれ、姜維じゃない)」「(姜維君ー!移っちゃったじゃないの!)」


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