隣の席の王異ちゃん




隣の席の王異ちゃんは馬超君が大嫌いだ。同じクラスなのに凄い目で睥睨しているのを知っている。馬超君と言えば、正義正義煩くてあまり気にしていないようだが、馬岱君と一緒に居るのをよく見かける。ほぉ、と溜息を吐いた王異ちゃんはきっと今日も馬超君の事を考えているのだと思う。そう考えると馬超君ってずるいなって思っちゃう。だって、馬超君に生まれただけで、王異ちゃんに憎しみや怒りでも感情をぶつけて貰えるのだから。本人はこんな美人さんを前にしても、素知らぬふりをしているけれど。王異ちゃんに何で、馬超君が嫌いなの?って聞いてみた。そしたら「何となくよ、気に食わないわ」とだけ答えた。前世で何かあったのかなってレベルで睨んでいるんだけどなぁ。まぁ、いいや。



そして、何で私がこんなに王異ちゃんに詳しいか。私は王異ちゃんが好きなのだ。友達としての好き?ううん、違うの。異性を好きと言っている人と同じ意味での好きなの。だから、私も馬超君に成りたいなって思っちゃうときがある。馬超君は悪い人じゃないんだけど、私の恋敵でもあるから、どうしてもいい気持ちがしない。しかも、更に気分が落ち込むことに今日は雨、最悪。傘忘れたんだよね。この間の通り雨の時風が強すぎて折り畳み傘折れていたのに買うの忘れていたという間抜けぶり。計画性の無さが表れている。自分で自分を蔑みたくなる程である。王異ちゃんはキチンと持ってきていたらしく、傘立てから傘を抜いていた。



傘の花がそこいらで咲き乱れている。王異ちゃんも行くのかなと思ったら立ち止まって私に話しかけてくれた。「どうしたの?傘は?」「あー、忘れちゃって」そういうと王異ちゃんがそのままの表情のまま傘をひらいた。パッと、鮮やかな青い色が広がった。「狭いけど入って行って」「えっ、でも」「大丈夫よ」そう言って私の手を引いた。道中は馬超の話は無かったがそれと言って盛り上がるような話題も無く沈黙もたまにあった。居た堪れない。何故、私等を傘の中に招き入れてくれたのか疑問で聞いてみた。「ねぇ、王異ちゃん。何で私を傘に入れてくれたの?」王異ちゃんはクスクス忍んだように笑って見せた。そして回答を導き出した。



「貴女が……名前さんが、気に成るから。かしら」どういう意味だろうと首を傾げてしまった。気に成る、気に成る……。考えてもわからない。だって、私はクラスメイト三とかそんな感じの人間で特に目立った行動もせずにおとなしい地味なグループに属している。因みに王異ちゃんは人を寄せ付けないような凄みというか、独特の雰囲気があって、一匹狼みたいになっている。そんな、王異ちゃんは美人だから引く手数多なのだが、どれも、断っているとの噂がある。彼女のおめがねにかなう、男子ってどんな男子なのだろうと気には成る。「あの、気に成るって?」「ええ、馬超とかとは違うわ。憎い、とかそういう負の感情じゃないの。もっと温かい、感情」そう言って哲学者の様に難しそうな顔をして私が濡れていないか確認してくれた。あ、王異ちゃんって凄く優しいんだ。



「だから、貴女の事もっと知りたい、この感情の意味を教えて頂戴」


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