隣の席の鍾会君




隣の席の鍾会君は頭もいいし、生徒会の副会長だし、イケメンだし、女子が憧れるのもわかるのだが、完璧すぎて私は苦手だった。まるで私たちとは違う種族ですと言われているようで、嫌だった。そんな彼と隣に成ったのは、先月の事だった。クラスの席替えは決まってくじ引きだった。皆が皆、だれだれと隣がよかったー、だの窓辺の席がよかっただの前の席は嫌だの不平不満を漏らしていたが鍾会君だけはジッと黒板を見つめてから席を確認して私の席の隣に机をくっ付けた。きりっとした、瞳に射抜かれて私は内心縮み上がりそうだったが「よろしく」とだけ言われたので「よ、よろしく……」とだけ返した。鍾会君は怖い。忘れ物には気を付けようと思っていたのに遂にやらかしてしまう日が来る。



「忘れていた」「?」「昨日宿題出されていたの忘れていた」絶望した。友達にプリント写させてもらおうかな、と思案に暮れていた所、鍾会君が「ん」と言って、プリントを突きだした。何だろう?と思って「どうしたの?」と聞いたら「どんくさいお前に、貸してやると言っているのだ。他の奴らのでは間違いがあるかもしれないだろう。私の完璧な回答ならば間違いもあるまい」どうやら写させてくれるらしい。案外優しい所もあるんだな。と思って有難くプリントを借りた。プリントの文字は綺麗で整っていた。本当に英才教育共済教育というだけあって、洗礼されていた。「字、綺麗だね。鍾会君、プリント有難う」「当たり前だろう」



今日は選挙だ。毎回鍾会君はこれに出ているのだが、一度も生徒会長に成ったことがない。いつも悔しげに歯を食いしばりながら、何であんな無能が。と呟いている。今に見ていろとも言っている。前回の事もあるので、私は鍾会君に投票したのだが、今回も鍾会君は副会長みたいだ。副会長でも凄い事なのに、鍾会君はとても不満気に口をとがらせていた。「残念だったね。私は鍾会君に投票したんだけど」「!そうなのか」驚いた様に目を見開いた。そして、私に対して「お前はわかっているな。次も私に投票してくれてもいいよ」と言った。だから、約束した。



通知表がやってくる日。鍾会君の通知表は、きっと五の数字が並んでいるんだろうなあ。と思っていたのだが、何故か鍾会君が不満気にどっかり椅子に腰を掛けながら通知表に穴が開くんじゃないかってくらい凝視していて舌打ちをした。なんでだろう?と思って、通知表を覗きこもうとしたら全力で拒否られた。「み、見るな!私に失望する!」「え、そんなことないよ。ほら、私なんて体育と数学の評価酷いよ」そう言って見せると鍾会君は考え込むような仕草をした後に見せてくれた。確かに五の数字がずらりと並んでいて英才教育ってすごいんだなと思ったら一つだけ二がついているものがあった。「美術……苦手なの?」「……私に苦手な物などない、あいつが芸術のなんたるかを理解していないだけだ」「へえ、なんか親近感沸いちゃうなぁ。鍾会君って、私にとって遠い存在だと思っていたから」「!」



そんな日々が続いたある日、また席替えが行われた。今度は、窓側の席をゲットした。ラッキーと思ったが、鍾会君と離れる日が来てしまった。「離れちゃったね」「そうだな。だが……」そう言って、メモを渡してきた。「これならやり取りできるだろう?」そう言って悪い笑顔を見せた。そして、案の定授業中にメモが回ってきた。達筆な字で今日、生徒会室で待っていると書かれていた。授業が終わって直ぐに生徒会室へ行った。そしたら、鍾会君が遅いと怒っていたが、それ以上に緊張しているように見えた。鍾会君に「何の用事?」と尋ねれば鍾会君が夕暮れのせいか赤く染まった頬を隠すでもなく「お前が、名前が好きだ。私と付き合え。お前は誉れ高き私と付き合う資格があると言っているのだ」「え、っと、お願いします」なんだか、告白の仕方も鍾会君らしいな。と思った。


戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -