逆とりっぷ!




ちょこんと部屋の隅に正座している男の人を見た時は綺麗な女の人特有の甲高い声は出なかった。かわりに驚いて、後ろに尻餅をついた上に腰を抜かしてしまった。相手は、私より少し年上の様に見える男性で、何か武器のようなものを所持していることを確認した。空き巣か?ならば、何故正座をしていたか?わからずに無言で見つめ合っていたがやがて相手が口を開いた。「あのぉ……此処は何処でしょう、私は諸葛公休と申します」「は、はぁ。外国の方ですか?私はその他(人名等)名前です」そう言って名乗ったことで少し緊張がほぐれた気がした。お互い名前と顔を知ったら取りあえず顔見知り、知り合いという事には成るのだから。



「軍議の途中急に、この部屋……に居て。私も何が何だか……、」軍議?それって、戦争がある国ってことかな?よくわからないけど、こんな恰好も見たことが無い。若しかして、現代の人じゃないとか?なんて柔軟な考えを持っているわけではないけれど可能性が捨てきれなかった。あまりにも彼は不自然すぎるのだ。しかし、何故日本語を話せるのだろう?よくわからない。「外をこの、透明な壁から見た所変な物が走っているし、危ないので此処に居させてもらったのだ……申し訳ない」「いえ、誰だって行き成りこんな所に来たら驚きますよ」案外常識人らしく、その鞭のような武器は振るわれなかった。ただ、成り行きで私は「しばらくの間で良ければ泊めてさしあげられますけど……」「本当か?!助かる」



そして、始まった謎の共同生活。彼には成る丈家の中に居て貰った。暫く此処にいると料理の手伝いなどをし始めるようになった。何でも働かざる者は食うべからずとかなんだとか。彼らしいなと思った。どうやら、彼はとてもまじめな人間の様で、恩義を感じているらしい。「若しも、私の国へ行けたら……私の家で沢山もてなしたいと思っている」と言っているくらいだ。だが、申し訳ないが、諸葛誕さんの国では私は死んでしまう可能性が出てくるので遠慮したいものが有る。だが、気持ちは嬉しい。



直ぐに帰れると信じたかったのだが、此処に来て結局一年過ぎてしまった。向こうのことを幾度も心配していたが、今や向こうの事を口に出すのは稀に成っていた。そういえば、大事なクリスマスも、お正月も誕生日も全部、諸葛誕さんと過ごしちゃったんだなあ、と思った。「名前殿は好いている男性は居るか?」「な、何を突然……、い、居ませんよ!」今、諸葛誕さんの事を考えていたなんて言えるわけがなくて逃げる様に(実際に逃げているのかもしれないが)いないと断言した。「そうか……私は、長い事貴女と過ごして、貴方と言う人を知り、貴女を好きに成った。どうか、これからも私を傍に置いてくれないだろうか。無論……いかがわしい真似はしないと心から誓う!」そう言って手を取られて、手の甲にキスを落とされた。気障ったらしい真似等……と思っていたが、諸葛誕さんは何故か似合う気がした。


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