天使みたいに笑うんだね



(誰か←夢主←太陽←女の子)


僕は太陽と呼ばれているけれど、その肌は白皙で、とても健康的とは言い難くて、僕のお見舞いに来る名前の方がよっぽど、太陽だと思った。僕はその傍に流れ見守る川でありたい、彼女に寄り添う風に成りたい、彼女に話しかける土に成りたい、彼女に照らされる星々に、月に成りたい。そう考えるのは根気よく僕の所に通ってくれる名前が大好きだからだ。「太陽君、見て綺麗なお花だったから、買ってきたの。あと、これね、宿題だよ」不意に彼女から違和感を感じ取った。なんだろう?些細な物であるに違いはないが、記憶の欠片を頭に集わせて考える。



「髪の毛切った?」「ああ、うん。気付いた?」「そりゃあ……ね」言葉を濁しながらも気付いたことに嬉しそうにするなめらかな声は何処かはずんでいた。僕は何か嫌な感じがした。なんでだろう?僕はわからなかった。同室の女の子がその様子を見ていたのだろう、名前が帰った後に、近づいてきてはにかんだ。僕も破顔して見せたけれど、彼女の言葉に僕は全身が凍りついた。「彼女綺麗に成ったね。きっと、恋をしているのね」って。ああ、違和感の正体はこれか。成る程と思ったと同時に、許せなくなった。僕はこんなに名前の事を想っているのに。「女の子って恋をすると綺麗に成るから」きっと、その相手は僕じゃない。



「名前、綺麗に成ったね」花瓶の花を取り換えている最中の名前の背に向けて話しかける。名前はいやだぁ、太陽ったらお世辞言えるようになったの?なんて笑っていたけれど声色は若干震えていて、あの女の子がニタニタこちらを見ているのに気が付いた。あけすけに言ってくれた方がもう楽なのに……。「恋をしているのかい?」パサッ、花束が落ちた。凋落してゆく花びらが地面に散らばった。「な、何を」「恋をしたら、女の子って綺麗に成るからね。誰に恋をしているんだい?」僕の言葉はまるで強制力があった。



名前は恥らうようにはにかみながら、されど何処か怯えた様に肩を震わせながら同じチームの――。そこからはノイズ交じりで思い出そうとしても頭がガンガンしてとてもじゃないけれど再生できない。女の子がニタニタ笑っている。下卑た、嫌な笑みだ。「太陽君じゃなかったね」って。僕は発狂して叫び出したくなってしまったが、女の子が口を開いたことで時が一瞬だけ息を止めた。「ねぇ、私綺麗に成ったと思わない?恋をしているからなの。ねぇ。太陽君、私、太陽君が好き」一、二、三。時が瞬きした頃には僕はその場から、駆けていた。「はぁはぁ、」僕には女の子が綺麗には思えなかった。残響する、耳の鼓膜を叩いている。「ねぇ、私綺麗に成ったと思わない?」「私、太陽君が好き」「女の子は恋をすると綺麗に成るの」意気地なし。僕の意気地なし。名前が好きならあの場で断るべきだったのに。



翌日、謝ろうと思って断ろうと思って彼女の好物を買ったけれど、僕の病室が賑やかだった。「退院おめでとう」「さぁ、帰ろう」「うん、太陽君、バイバイ。今まで有難う。あの子とうまくやってね」「おいおい、何があったかパパにも教えてくれよ」賑やかさが去って行ったとき、僕は気づいた、女の子は最初から僕の心が女の子にないと、迷惑だと知っていたのだ。だから、退院の前日に告白したのだ。玉砕すると知りながら告白したのだ。何も言わないという選択肢もあったのに、何故そうしたのか、考えたが行きつく先には「悔いを残したくないから」だった。



僕は臆病者だ。女の子の様に強く成れない。振られると知っているから、僕になんか心が無いと知っているから、だから、僕は絡め取るがじゅまるの樹の様に。成りたい。あの子の心を絡め取るがじゅまるの樹。ねぇ、女の子が恋をすると綺麗に成るって嘘だよ。興味のない女の子が綺麗に成っても僕は気づけなかったもの。名前、君が僕は大好きだ。たとえ、あいつが好きだとしても。ねぇ、こっちを見てよ。詮無いな本当に。

Title Mr.RUSSO

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