泣き叫ぶ心音



(シュウがヤンデレ/悪霊化)


彼女は怖がりだった。僕がもう生きている人間でないとしるなり掌を返したかのように悲鳴をあげて、お化けっ!っていって涙目で睥睨したのだ。その時に芽生えたのは恋心にも似た嗜虐心だった。酷く虐めたくなってしまって僕は名前を追いかけまわしたり昼夜問わずに名前の目の前に現れてみたりした。その度に腰を抜かして必死に地面を這いずる姿はサッカーをしている選ばれたシードとは大違いだなと思った。白竜がもうやめてやれ。と言ったけれど何で?と尋ねた。君の物じゃないだろうと言えば「いいや、俺のなんだ」僕は衝撃でその場に縫い付けられてしまった。



脅かし過ぎちゃったから白竜なんかに取られてしまったのだ。そう思うと胸の中が熱くメラメラ燃える様に、煮えたぎる様に嫉妬に駆られた。その日から僕は驚かすのをやめた、一切だ。だが、名前は僕を見るたびにビクビク。僕が何もしなくなっても続いた。無害だと証明するためにこっそり、部屋の前にこの島で一番美しい野花を置いた。毎日。最初のうちは捨てられていたみたいだけど、その内可哀想なのと綺麗なのとで、飾られるようになったのを僕は知っている。僕の執着は間違いなく強さでは無く名前に変って行っていた。



合同でサッカーをすることになった。僕は狙いを白竜に絞って間違ったふりをして蹴りつけたりした。「貴様……っ」「悪いね。君に恨みはちょっとあるけど、僕も名前が欲しいんだ」あの子が欲しい。あの子が欲しい。あの子が欲しい。ほしい、しい。い、いひひひひひ。意識が遠のいていく。走馬灯のように白黒のムービーが脳内で上映されるそこでの僕は怯える名前に何かを喋っていて、目は死んだ魚の様に濁っていて、見下ろしていた。思索する、僕は彼女に何をした?「むぅーむぅー!!」走馬灯が途切れ下から声がして見下ろせば、艶やかな黒髪を乱して必死に芋虫の様に這っている名前が居た。



「わぁ、どうしたの?!名前、今口のガムテープ外すから!」そう言ってベリっとはがした。ああ、ちょっと唇がむけちゃったね、可哀想に。「化け物!!」そう叫んだ。何が?僕は名前を助けようと……「白竜の言うとおりだった。あの合同訓練から可笑しいと思っていたら、この地縛霊!……悪霊!」と僕を面罵した。僕は吃驚した。「僕は何をしたんだい?何も覚えていないんだ、ただ、僕は君が好きで」「何を言っているの?!私こうして縛り上げてこんな辺鄙なところまで連れてきたのは貴方よ!シュウ!」


その言葉が本当なら僕は地縛霊にプラスして悪霊のようなものに成ってしまったらしい。意識が無かったんだもの。そう考えるのが普通だろう。あ、あ、目の前にあの子がいる。名前がいる。白竜の物、でも、僕も欲しい、欲しい、欲しい欲しい欲しい。「あ、ああああああ、キミガホシイ!!!」そこで僕の意識は完全にシャットダウンした。

Title 彗星

戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -