世界の果てへ花束を



ベータちゃんに想いを告げた時の顔と軽蔑しきった様子を今でも鮮明に覚えている。気持ち悪いですぅ。と吐き捨てる様に言ったのも覚えている。私は泣き崩れながら、その場で暫くずっと泣いていたと思う。一般市民だったけれどベータちゃんとは幼馴染でベータちゃんはエルドラドに入った。だけど、私は入れなかった。能力が無かったのだ。仕方なしに、数か月に一回逢えるかどうかのベータちゃんとの逢瀬を楽しんでいた。でも人間と言うのは貪欲な物で、ドンドンと欲しくなっていく。欲しがりだなぁ、と自分でも苦笑しながら、ベータちゃんの手を握ったり、たまに食べさせ合いっこしたりして、心を満たしていた。疑似の恋人みたいで私はそれだけで満足しているつもりだった。



だけど、ある時アルファという男がたまたまパフェを食べている時に通りがかったらしくベータちゃんに話しかけてきたのだ。「なぁに?根暗が移るんですけどぉ。え?何喋っているかわかりません、もう一度」「ベータ、少しはお前も……」何を話しているのか話の内容はさっぱりわからなかったのだが、私よりも仲がよさそうに見えて、それから……ベータちゃんが此処まで悪態をつけるのはきっとアルファって男が好きだからだと結論付けたのだ。私は悲しくなって、悔しくなって。振られるのを承知の上で告白した。私が一番ベータちゃんを愛しているのだと証明したかったのだ。だが、結果は上記の通りである。私を軽蔑しきった、気持ち悪い物を見る目で避けたのだ。



私は悲しくて悲しくて、もう死んでしまいたいとすら思うように成った。テレビのモニターも付けることもしなくなって、料理もまずいと感じてしまって吐くようになった。それくらいベータちゃんに心を奪われていたのだと思った。それから、ベータちゃんには逢っていない。元々数か月に一回だったのだから当然だろう。それに最近セカンドステージチルドレンの活動も活発に成ってきていて、破壊されてまるで紙屑のように街が崩れていくのを見た。遠くでぼんやりと眺めていたら、逃げていると思われる後ろの人にドンと当たった。「すみませ……」だが、相手が悪趣味なセカンドステージチルドレンの服をきた子供だと気付いたとき私は凍りつき、此処で死ぬのを覚悟した。相手は口元をマスクで覆っていて分からないが目がにやついていて、獲物を見つけた捕食者の目をしていた。



その時だった。サッカーボールがビュンと風を切り、勢いよく飛んできてマスクの少年の顔面にぶつかったのは。少年は行き成りの事で対処できなかったのだろう。勢いよく吹っ飛んで、体制を立て直した。「おい!俺を誰だと思ってやがる、こんなボール遊びで俺を倒せると思うなよ!エルドラドのじじいどもの犬が!」と咆哮した。「うるせぇ!!いつ死ぬかわからねぇ、餓鬼が!」私は助けてくれた、相手を一目見ようと窺うように見るとそこにはエメラルドグリーンの髪の毛をした男らしい声を荒げる女の子が立っていて、ベータちゃんだと直ぐに気が付いた。直ぐに、応援も来て、アルファと白い髪の毛を逆立てたナルシストっぽそうな子が駆けつけてきた。「ちっ、数で攻める気か。俺の超能力侮るなよ!」ドォン!と後ろの壁に成っていた家を叩くと瓦礫の山と化した。だが、直ぐにそれも終了を向かえた。「やぁ、ロデオ。もういいよ、ちょっと応援の数が多すぎて、面倒だから帰ろう」「さ、サル!でもよ!」「後で聞いてあげるから」それから瞬時にその身が消えた。



「おい!名前街に出るんじゃねェ!テレビも見てねェのかよ!っつたくどうしようもねぇ女だな!俺はお前が嫌いだと言っただろう、気持ちわりぃから外に出て来るな!」「おいおい、言いすぎじゃないのかいベータ。君は気性が激しすぎるよ」「言い過ぎだ」私はその日の事をあまり覚えていない。



あれから泣いたり笑ったり荒れた日々を過ごしている。でも、ベータちゃんの言う通りなのだ。私は気持ち悪いんだ。テレビを見ろと言われたから見ていたらベータちゃんが映っていて「当然ですぅ、あんなセカンドステージチルドレンなんて、敵じゃないですぅ」と何かのインタビューを受けていたみたいで作ったような媚びた猫のような声を出していて、ぶわっと涙が込み上げてきた。もう逢えないと思うと辛くて辛くて。それを消してソファーに身を横たえた。コツコツコツ、誰かがノックをする音がした。控えめだったがやがて「居るんだろう?!名前出てこい!」とベータちゃんの声がした。私が恐る恐る顔を出したらベータちゃんがいつものように穏やかな表情で「全て終わりましたよぉ、予想以上にあっさりしていて、吃驚です。もうセカンドステージチルドレン居ないので安心してくださいねぇ」「なんで……」



ベータちゃんは私が気持ち悪いって。って呟けばベータちゃんは三日月の様に瞳を歪めて唇を乱暴に奪ってきた。「外に出て欲しくなかっただけなんですよ?外にはこわーい、セカンドステージチルドレンが居たから。気持ち悪いのは私も一緒なんです。名前がだーいすきだから、うふふ」「じゃ、じゃぁ」「ええ、大好きなんて生ぬるいです、愛しています。今すぐに、食べちゃいたいくらい、ねぇ。どうでしょう?私に食べられるのは」痛いかもしれないけれど、怖いかもしれないけれどベータちゃんにならガブリと捕食されちゃっても私幸せなの。


Title 約30の嘘

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