神が死んだ日に、僕は



(夢主が死ぬ)


啓が神を否定した事等一度も無かった。神の存在や意思は絶対であり、いつも祈ったりして生きていた。洗脳が解けた後もほかのメンバーは比較的早くに、治ったというのに、啓の場合は尾を引いた。まだ、神が居ると信じていたのだった。「神様、声が聞こえません」声は聞こえなくなったらしい。それでも、今まで信じていたものが足元から崩れ去っていく恐怖に歯を食いしばりながら耐えていた。それを心配したのはメンバー全員だったが、啓の彼女であった、名前は一番心配した。ただのコードに操られていただけだ、あいつのせいだ。とか言っても聞き入れてくれない啓はただ、名前には聞こえないし見えないからわからないんだよ。と口をとがらせて言った。だが、そんな日々にも終止符が打たれる瞬間がやってくる。



啓は毎日祈っていた。自身の事、メンバーの事、それから家族の事に一番は名前の幸せを祈っていた。だから、だろう。名前が死んだとき、神も死んだのだ。「神様の嘘つき!!ああああああああああっ!!!」荒れた啓が神を罵倒しながら涙の跡を幾重にも作りながら叫んだ。「神様なんて居ない!そんなもの偶像!虚構!邪神!!あんなに僕が信じていたのに、崇拝していたのに、祈っていたのに。全部全部全部全部裏切りやがって!!」落ち着けって、メンバーの改に言われて暴れる啓を押さえつけたがそれでもその腕の中で暴れた。「離して!離せよっ!!名前!!名前!!!」「落ち着け啓!!」



何せ、事故とかそういうものではなく、残忍な犯人が名前を強姦したうえで、サンドバッグ代わりに何度も殴りつけたり、ナイフで滅多刺しにしたうえに、遺体に火をつけたとか、もう遺体はボロボロでとてもじゃないが目を覆いたくなる惨状だったのだ。啓は発狂したように神を罵った。「何で、名前がこんな目に遭わなければいけない?!僕は!!毎日、名前が陽だまりの中で笑って生きていけばいいって思っただけなのに!犯人なんか同じ目に遭って死ねばいいんだ!死ね!死ね!!死んでしまえっ!!」洗脳が解けたのが、名前の死が原因だなんて何て皮肉なんだろう。と他のメンバーは思ったし、啓の言うように犯人の残虐性には同意しか出来なかった。



それからの啓は人形みたいに成ってしまった。無感情の人形のようによくできた精巧なそれ。たまにぽろぽろと意味も無く流れる涙の理由は啓にも分からなかった。ただ、神は居ない。この世界に神は居ないよ。と啓は言うように成った。「痛かったかな、苦しかったかな、熱かったかな。どうして。僕は、こんなに無力なんだろう」そう啓はさめざめと泣いた。いつか立ち直ってほしいとメンバーは思っていたが、傷は深すぎて、致命傷のレベルだった。神は此処に、貴方の中に。そう書かれたキリスト教の張り紙をビリビリに破いたり、素行は荒れていく一方だった。神は居ない。或いは、死んで腐乱死体だった。兎にも角にも、彼の中の神は死んだに違いなかった。

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