ばいばいぐっとばい



(メンヘラ神童とメンヘラが好きな女の子)


私が好きなのは泣いている神童だ。普通男の泣いている所なんて、情けないとか思うのだが、あの情緒不安定と言うか、抑えきれない感情の昂り。弾くピアノの音もまるで彼の心を移したかのように、美しく綺麗だ。だからだろう、私はよく神童を泣かせる。全部全部、わざとだ。昨日はわざとラインの既読無視して、電話が鳴りやまないのを無視してやった。神童の奴きっと涙目で何度も何度も何度も、連絡したんだろう。ラインの内容も最初は「何している?今日のテストの結果はどうだった?」とか日常会話だったのに最後の方にはもう可笑しなことに成っていて「俺の事嫌いなのか?」「返事してくれ頼む」「あああああああ」「名前、名前、名前、名前……」とか。メンヘラ全開だった。



翌日学校で逢った時に普通にお早うって言ったのを無視したら、遂に泣きだした。「ぅう、うっ。名前……どうして、どうして。俺の事嫌いなのか?」嫌い?それは間違いだ。私は神童の事がどうしようもないくらい大好きなのだ。でも。それは純粋とはかけ離れた汚れきった、邪な感情も併せ持っているのだった。神童の無いっている姿に私は悦に浸ったかのような表情を作った。綺麗、だ。流れ落ちる雫はきらりと光を照り返していてぽろぽろ落ちては形失い。なんて、愛しいの!なんて、綺麗なの!「俺はこんなに好きなのに、好きなのに。あああああっ、」瞳が歪む。そこには私だけが移されていて、世界は隔絶されていた。



私はずるずるとへたり込んで、涙を流し続ける神童に「私も好きよ」と言って、目元にキスを落とした。しょっぱい涙の味がした。思うに神童は最初はまだ普通、といっても少しばかり泣き虫だったけれど、それを悪化させ加速させたのは、私と言う悪夢のような存在だったのだと思う。何故なら、神童は最初こんなメンヘラみたいな男ではなかった。まだ、理由のわかることで泣いていた。だが、私と付き合うように成ってからは毎日のように泣くようなった。私に捨てられないかとか、そういう事を呟くようになった。私と言う存在は神童にとって、とても重要な位置に居たらしい。



「本当か?じゃあ、何で」「神童の泣いている所が一番好きだからよ」歪んだ、笑みで。ばいばい、


Title 彗星

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