星は何色なのでしょう



姉妹


夏未は隠れた所で努力していることが多い。それを名前が一番知っていた。今日もサッカーの資料に目を遅くまで通していた。最近は、そればかりだ。若しくは勉強、習い事……名前とは実の血を分けた一つ差の姉妹だが、昔はよく遊んでいたのに、最近はめっきり遊ばなくなった。成長したと言えばそれまでだが、名前は寂しかった。コツコツ。夏未の部屋のドアを手の甲で数度ノックする。「姉さま」「あら、名前どうしたのかしら?」「いえ、姉さまの部屋の明かりがまだついていらしたので。まだ起きていらっしゃるのかと。……また、サッカーの資料ですか」ひょいと顔を覗きこませて、少しだけ面白くなさそうに、顔を顰めた。だが、夏未はそれに対して宥めるように「私に出来ることはしたいのよ」と言った。「ふぅーん、」



「ね。姉さま、いつも家に居る時は部屋に籠っていらっしゃるわ。たまには私と遊ばない?ね?いいでしょう?」夏未は困ったように眉根を寄せた。確かに急ぎのものではないが、遊びに時間を取られるのは少々、気が引けた。だが、名前は今日こそは何処にも行かないぞという意思を見せていて、夏未は諦めたようにはぁ、と溜息を一つ吐いて「いいわよ」と言った。「やった、それじゃあ、部屋に上がらせていただきますね」するりとドアを抜けて、中に入ると名前にとって安心する匂いに包まれた。思わず、目を細めて、破顔してしまった。「姉さまと遊ぶのなんて久しぶり!……でも、何しましょうか」遊びは決めていなかったようで、名前が顎に手を当てて考え込んでしまった。



暫くして、夏未を見つめて。「あら、姉さま。肩が凝っているのじゃありませんか?」「そ、そう?」「決めた!姉さまを癒して差し上げます。肩もみ、しても、いいですよね?」そう言ってそっと、ベッドに誘導して夏未を据わらせた。そして、肩に両手をかけて揉み解しはじめた。「力加減はいかがでしょうか?」「あ、ああ、大丈夫よ」大丈夫だという事を確認すると、そのままの力加減で肩もみを続けた。「ねぇ、姉さまって綺麗よね。この、紅茶を溶かしたようなウェーブのかかった髪も、白魚の様な指も、うなじも、勿論顔も。誰かから、告白とかされたことないのかしら?」興味津々と言った様子で尋ねてきたので夏未が困ったように柳眉を寄せて、狼狽した。恋とかそういうのを意識していないわけではない。だが、夏未は少し耐性が無かった。告白はされる。雷門の娘なのだから、余計に多い。



困ったように、されど肯定した。「ええ、まあ」「へぇ、例えば誰とか?マンモス校だから、私わからないかもしれないけど、気に成るわ」また興味を示した。夏未は顔を赤らめながら、ぼそぼそと二人きりの部屋、聞こえるが震えた声量で言った。「佐藤さんからよ」「へぇ、野球部のエースの?」「ええ、」頷いた。どうやら、本当に野球部のエースと言われている二年の佐藤から告白を受けたらしかった。「姉さま、気に成る?」「そ、そりゃあ、告白されたら誰だって気に成るわよ……」「ふぅーん、付き合うの?」揉んでいる手に力が込められた気がした。心なしか、名前の顔は悲壮感に包まれている。それを悟ってか悟っていないのか「いいえ」と答えた。「そう。私、姉さまが付き合う所を想像したら胸が痞えてしまって、苦しくて、どうしたらいいかわからない。私たちは二人一緒だったのだから、離れ離れに成ってはいけないのよ」「名前……?」



不安気に見上げると狂気と愛を孕んだ瞳とかち合った。「だから、佐藤さんと付き合わなくて本当に良かったわ。姉さまがいつまでも、私の所に居てくれればいいのに、ねぇ、姉さま。姉さまは自分の美しさを自覚するべきよ、何処もかしこも綺麗で、絵に成るのに。姉さまは自覚せず、男を誘惑する形でそれを見せつけているのよ……ふふっ。ねぇ、姉さま」肩もみはいつのまにか終わっていた。代わりに首筋に顔を埋めた名前が愛おしげに髪を梳いていた。それは絡まらることなく、スルリと、指をすり抜けた。「私、姉さまの為なら何でも出来るのよ、姉さま、ねぇ、姉さま。愛していますわ」


Title カカリア

戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -