いつかの日で君を愛せるように



だから、嫌だったのだ。海外旅行だかなんだか知らないけれど、外国なんか行きたくなどなかったのだ。「待っていてね」とちゃんと言ったはずなのにも、関わらず戻れば両親は何処かへ行ってしまっていて私だけがはぐれてしまった。たとえ、何か問題があったとしても娘を置いていくものだろうか?こんな何も知らない異国の地でならば尚更だ。周りは外国人ばかりだし、本当涙目。とはいえ……此処は日本ではない。つまり、相手からしたら私のほうが外国人だ。帰りたい。言葉も通じないし……(親は出来るらしいのだけど、私はさっぱりだ。)暫くの間此処で待ってみたけれど、親は帰ってくる気配がない。なんてことだ。私はこの知らない異国の地に捨てられてしまったのだろうか?段々と心細くなっていってネガティブなことしか、考えられなくなってきた。俯き、ベンチに腰掛けていたら自然と涙が零れてきた。友達も知っている人も居ない、誰も私を知っている人なんか居ない。



不意に影を作る。涙を拭って前を見れば、長身の薄水色の空を溶かしたかのような綺麗な長髪を風に晒した男の子?が前に立っていて、私にハンカチを渡してくれた。『大丈夫ですかレディ』「?あ、有難うございます……じゃなくて……サンキュー……?」簡単な英語しか出来ないのでそれで涙を拭いながら言うと男の子は嫣然と笑んで気にしないでくれと言ったようなリアクションを取った。それから背中を撫ぜてくれた。日本語は喋れないのだろう何となくだが「泣かないでくれ」と言っているような気がして私は必死に笑顔を作ってサンキューサンキューと拙い英語で感謝の意を伝え続けた。男の子は笑って大丈夫だと言ってくれているかのように、必死で私のレベルに合わせた英語を使ってくれた。



名前はエドガーというらしい、そしてサッカーが好きな事も何となくだけど理解した。今度の試合に出るのだろう。チケットを渡して何かを言ってきた。「?」よくわからなかったけど、見に行くねとだけ伝えて、その日は両親が探していたのだろう、戻ってきてくれたからよかったものの暗くなってきた時に送ろうと言う仕草を見せてくれたのが嬉しかった。そして、後日試合を見に行った。エドガーはどうやら、キャプテンらしい。凄い人だと知るのに時間はかからなかった。その日は日本との試合では無かったのだが、勝利を収めた。そして、私を見つけるなり目を丸くさせた後に破顔した。試合後女子の群れを掻き分けてエドガーに逢いに行った。



するとエドガーは私の手を握ってソーリーといって、駆けだした。私はその足についていくのに必死だったが大きな樹のあるところまで行くとベンチに座らせてくれた。相変わらずごめんなさいと謝っていたが次に出た言葉に面食らった。「I love you so much……!」流石にその言葉の意味がわかる私は俯き俯瞰されているのを知りながらも、黙りこくってしまったのだった。


Title すいせい

戻る

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -