娘の憂鬱



前→彼女の憂鬱


「はぁ……。私は名前ちゃんとお父さんに仲良くしてもらいたいのになぁ……」携帯を机に置いて、ベッドに腰掛けた。フカフカのベッドに自分の体重がかかって少し沈む。お互い敵意をむき出しにしていたあの時のことを思い出し、眉をひそめた。お父さんはいた。だけど、お母さんはいなかった。だから、私はとても辛い思いをした。それも本当のお父さんではないということを知ったときはとてもショックだったが自分の中では監督もお父さんなのだ。「……」憧れていたのかもしれない。お母さんがいるという環境に。両親がいるという環境に。兄弟、姉妹。周りの全ての環境がとても輝いて見えていた。町で親子が、母子が仲良く歩いているのを見て「羨ましい」と思ったことは一度や二度ではない。



どうして、お母さんがいないの?なんて、お父さんを困らせたこともあった。小さい頃に見たあのお父さんの顔が、子供心に辛くてそれから聞くのをやめた。全てを知ったとき、私はなんて残酷なことを聞いてしまったのだろう、と何度も自分を責めた。異性が嫌いなわけではない。お父さんは、物事を冷静に見られる大人で凄いな。って思う。サッカー部の皆はキラキラと眩しい。太陽の下でサッカーをする彼らは誰から見てもとても魅力的だし、とても素敵だと思う。だけど、なんでだろう、ね。名前ちゃんじゃなきゃ駄目。名前ちゃんはいつだって、私のことを考えてくれていて、私のほしい言葉をくれる。とっても優しくてずっと居たいな、って思うようになってしまった。友達でもよかった、って思っている。でも、遠すぎた。あまりにも遠すぎた。



名前ちゃんは私にとっての太陽。きっと、雷門さんたちが守君に感じている煌めきと同じ。同性だけど、同じなの。性別とかそういうの超越して私たちは愛し合っている。恋人として成立している。この間、名前ちゃんが認めて貰えないのが悔しかったのか、一緒に駆け落ちしないかと提案してきたが(勿論冗句だったようだが)いつに成ったら、認めてくれるのだろうか。お父さんにも同性でも、恋人に成れるし、慈しみ合うことが出来るんだよって教えてあげたい。もっと、この世界は広いから。もっと複雑な事情を抱えた恋人も居る。その中で私たちはただ、同性だけど惹かれあっただけなのだ。



今日も名前ちゃんと一緒に居られる、幸せ。

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