人生リセット



きもいです、あと死ネタ。…自殺彷彿させる表現あります芸夢が凄く痛い子です。注意。


「ごめんなさい」彼女はとても申し訳なさそうな表情と声音で、俺に謝った。俺には名前を責める理由がない。二人きりの教室。重たい沈黙の中さっきまで高鳴っていた胸を軽く右手で抑えた。先ほどまで酷く熱を帯びていた何かも今は急激に醒め、なんだか逆に笑えてきた。ククと噛み殺していた、笑いがこみ上げてくる。「そうか」



そこで俺は、言葉を詰まらせた。俺は振られたのだ。これは、彼女のせいではない。どちらかといえば、ゲームが大好きなオタクだとか、自分に非がある。それは俺自身が一番よく理解していることだ。「……きっと、芸夢君には私なんかよりもそういうの、理解してくれる人がいいと思うの」そう、か細い声で言う。俺と視線が交わることも無くただ、彷徨わせていた。早く、こんなこと終ればいいと思っているんだろうな。気まずい沈黙が訪れる。重い、重い、外から聞こえる元気な声が救いだった。



あぁ、俺は何処で、フラグを折ったんだ?そもそも、名前ルートには入ってすらいなかったのか?彼女の攻略なんて、売ってないし。どの攻略本にものってやしない。「ああ、そうかもな。有難う」俺は、名前に感謝の言葉を向けた。彼女はこの秋葉中の中でも浮くくらい、そういうものに興味のない一般的な女子だった。転校してきたから、仕方がなかったのかもしれない。清楚で、綺麗な女の子。



ああ、それにしても普段の俺なら、どうする?ゲームオーバーのときなら多分むしゃくしゃして「畜生!」なんて、言いながらコントローラーを投げつけてコンテニューするだろう。もしくは、そのままそのゲームを積む。ギャルゲーならこれは、バッドエンド。この後はきっとスタッフロールでも流れる頃合だろう。「そうか、そうだな……」俺は勝手にある結論に達していた。リセット、だ。リセットすればいいじゃないか。だが、この人生というゲームにはロードという便利な機能は存在しない。あるのは、そう。「電源ボタン」のみ。切るか、続けるか、最初からはじめるかの三択。セーブポイントはない。とんだ糞ゲーだ。セーブデータがない。つまり、一度完全に切って、つけるしかない。だから、俺は最初からはじめようかと思う。



皆はこのくだらない糞ゲーを続けてればいい。皆ドマゾかよ。俺はこんなくだらないもの続ける気なんて毛頭ない。俺が望んだ結末以外の結末などただの、バッドエンドでしかないのだから。名前は急にどうしたのだろう、という表情で俺のことを不安そうに見つめていた。俺は窓を見た。鍵はかかっていない。空気入れ替えのためにさっき先生があけていたのだ。(まぁ、鍵かかっていても簡単に開けられるけどな。造作もないことだ)「じゃぁ、俺電源切ることにするな。またな、名前」乱暴に窓を片手で開けると、ぬるい風が窓から入り込んできた。俺は窓から片足を出すと、プラプラと足が地を求めるかのように揺れた。恐怖心よりも、何故か心は穏やかだった。



「芸夢君、何考えて……!?」名前は顔面を蒼白にしながら俺をとめようと抱きついてきた。暖かくて、柔らかい。人の体温だ。腕は細くて色白、そして微かに震えていた。何で、こんなに必死に止めるんだろうな?俺には理解ができないことだった。此処は三階、微妙な高さだ。うまくいかなかったら、死ねないかもしれない(まあ助かっても、ろくなことにはならない、か)だから、彼女は止めるのだろう。「なんだよ、とめるなよ。俺は、今からこのゲームをリセットするんだ」



人生というゲームを、な。といつものように笑う。大丈夫、次この糞ゲーやるときはちゃんとお前のフラグたてるからよ。名前は俺の話を終始わけがわからない、という表情で聞いていた。俺は心地よかった名前の腕を無理やり振り解いてそのまま、地面に向けて飛んだ。名前が止める間も無かった。それは、一瞬の出来事だった。俺には、長い時間に感じたのだけれど、きっと、他の人にとってはくだらないいつもとかわらない時間なんだろうな。



上から名前の女子特有の高い悲鳴が聞こえた。その声に、俺は少しだけ嬉しくなる。その悲鳴は俺だけのためにあげてくれたんだろ?多分これから少し騒がしくなるんだろうな。名前のせいにならないといいんだけどな。あぁ、大丈夫だ、安心してくれ。俺はゲームならなんだって得意なんだから次はフラグ折らないように、気をつけるさ。



人生リセット
(あれ、でも名前エンドそのものが無い場合は?)

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