けだし華は咲かない



ジリジリ照り付けるは、肌を焼き紫外線を放射する憎き太陽。一度睥睨して、もっともっと忌々しい神童を睨みつける。別に、彼自身に恨みがあるわけではない。というより、彼はどちらかというと私と住む世界の違う人間で、まぁ、ヒエラルキーの頂点と底辺らへんにいる、月とすっぽんのような関係である。まぁ、わかりにくいかもしれないが、要するに、私と彼の接点はあまりなく、隣でパシャパシャとフラッシュをたいている、茜と接点があるのだ。茜はサッカー部のマネージャーを務めていて、神童と忌々しいくらいお似合いである。それくらい可憐で愛らしいのだ。ほわわんと花が舞っているよう、例えるならそう、妖精さんとか。ファンタジー世界の住人だ。



ジーッと神童を観察していれば、神のタクトを発動させていて皆を勝利に導いている最中だった。茜の視線はもう、そっちにくぎ付け。私が隣に居るっていうのに、もう居ないもの、透明人間に成った気分だった。面白くない、そう心の中でどす黒い感情を巻き起こさせながらも話しかける。「神童格好いいね。今日も勝ちそうじゃない?」言葉は刺々しく、本当は心にもない事をって思ったけれど茜の動きが止まった。そして、ジッとこちらを見つめてきたのだ。そして、カメラをゆっくりおろした。私は息を飲込みその仕草に目を奪われた。私は茜の興味を刺激することに成功したのだ。だけど、心にもない事だからこれ以上は……「駄目」



「へ?」何が駄目なのかわからずに、素っ頓狂な声を上げてしまった。だって、私は神童を貶したわけではないし、ある種自分が負けているというようにとれる発言をしたのだ。だが頬を含まれせた、茜が言った。「名前ちゃんも、しん様のこと……」「だーっ!違うっ!」なんていうことでしょう。茜は世にも恐ろしい勘違いをしていた。私が神童の事を好きだとかいう、反吐が出そうな勘違いだ。勘違いも甚だしい!自分と神童の並んだ姿を想像して悪寒が走った。無いわ。無いわー!茜の膨れた頬をつついてみせた。「単純に褒めただけだよ、全然そんなつもりはないよ」茜が大好きなんだから。……なんて、言って落ちてくれたらこの世界は優しいのに。世界は優しく出来ていない、らしい。茜はほっとした表情を浮かべて「そう、名前ちゃんにもしん様の魅力がわかったんだね、」と言った。わからないし、これからも理解しようとは思わないけど。



敵情視察の為に神童の事は見ると思うよ。忌々しいと思いながらね。いつか、茜のカメラが私にも向いてくれますように、と今は願うだけだ。


Title 彗星

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