嘘吐き心のオッドアイ



あの子は元気にしているだろうか。もう随分と逢っていないね。今日は何をしているのかな?おめかしして街で可愛い洋服を買って、それから他にもショッピングして、それからあの子の彼氏と夜に少し高いレストランでデートかな?夏未……。円堂は夏未の事大事にしてくれているかな?私の見たことのない顔でキスをしているのかな?夏未、私の気持ちなんて知らなくていいよ。私の気持ちは遠く消し去られていく。夏未は今幸せでしょうか?夏未が泣いたらギュウッて抱きしめて、夏未が笑った時は一緒に喜んで、夏未が寂しい時にはキスを落として、夏未が不安で眠れない日は、頭を撫でて優しく名前を呼んであげて。夏未、私の事は二度と思い出さなくていいから。夏未は今日結婚する。私も勿論行くよ、この恋を終わらせるために、あの子の幸せを未来永劫祈れるように。思えば長い長い恋だった。洞窟のように、若しくは落ち窪んだ目の様に、暗く暗く、救いのない恋物語だった。それでもよかった。あの子が、幸せなら私は全てを投げ打ってもよかった。だから、夏未の事大事にしてあげて。



結婚式当日。私は涙を流しながら、歓喜した。夏未が幸せそうな顔で隣に並びあった、円堂が居た。打ち震えながら、私が彼女にしてあげられなかった事を円堂がしてあげるんだ。夏未にどんな欠点があってもどうか、愛してあげて。ずっとずっと大事に愛してあげて。「名前さん、私、幸せよ」「うん」化粧直しから戻ってきた夏未は終始笑顔で私に幸せをくれた。「夏未は私の一番の親友だから、だから幸せに成ってくれて本当に嬉しいよ」酩酊しているかのように、視界がぼんやり輪郭を失くしていく。失速していく。「有難う、名前さんの幸せも祈っているわ」指輪交換で指にはめられた煌めく宝石がきらり光った。「うん、有難う。夏未、……大丈夫、私、今とっても幸せだから」



円堂、夏未の事泣かしたら許さないんだから。負けを認めて、円堂に夏未を託したんだから。滔々と流れる涙が止まらないのはなんでなんだろう。本当は私が幸せに出来たらよかったのにね。なんて、我が儘かな?答えは見つからない、落ちていない。魚には心が無いらしい。私も魚だったらいいのにな、なんて、思った。許されるなら、愛されたい。


Title 彗星

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