レグルスは星を食む



ギュエールは羽をもがれるし、夢主はガチの狂人。


天使様が地上に舞い降りたのを知っていた。だから、私は天使様にお願い事を叶えて欲しくて、天使様を捕まえたのです。天使様は言いました。「死んだ人を生き返らせるのは、この世界の理に反すること、出来ません」と。美しいウェーブのかかった薄い色素の髪の毛をふうわり、風に揺らせて。私は怒った。天使様ならば死んだ私の恋人を生き返らせることが出来る筈なのだ。それをしないのは天使様の意地悪なのだ。だから、私は包丁で天使様の羽を切り落としたのだ。断末魔が頭の中で未だに木霊している。痛い痛い、と呻く天使様にもう一度お願いした。生き返らせてくれって。そしたら、天使様が泣きながら無理です、でも、と言葉をつづけた。



その先の言葉とは。幻想の中で生きることに成りますけど、夢の中では彼は生きて貴女を抱擁しましょう。と言った。私は夢の中で生きることにした。たまに食事や水分補給を行って、一日中夢の中で逢った。彼との逢瀬は楽しい物だった。だが、次第に陰りが見え始めた。天使様が羽をもいだことによって、酷く衰弱したのだった。私は困った。人間に出来る事全てをしたけれど、弱っていく。少しでも長生きしてくれなければ私が天使様を殺してしまうだなんてとんでもない。私は天使様を畏敬しているのだ。



天使様?天使様?呼びかけても反応がない、彼女に初めて出会った時に教えて貰った名前を呼んでみる。初めて天使様の名前を呼んでみた。「ギュエール様?」動かない、動かない。もぞもぞ、何かが蠢いている。嫌だ、見たくない。フラッシュバックを起こす。気分が悪くなって私はその場で吐いた。吐瀉物が服にかかったので、脱ぎ捨てて他の服に着替えた。天使様は死なない。神様のご加護を受けているから死なない。だから、これは何かの間違えなんだ。ああ、そうだ。きっと。私が長い事、地上に留めてしまったから神様が怒ったのだ。そうに決まっている。ならば、地上から楽園に還してやらねば。



だが、もう羽のない天使様。私は千切ってしまった羽を針でその背に縫い付けてロープを持ってきた。そして、首にロープを巻いて、この町で一番大きな樹に吊るしてあげた。これで、きっと天に帰れるよね。天使様。長い事留めてごめんね、天使様。でも、彼との逢瀬は楽しかった。天使様、天国では彼笑っていますか?

Title 彗星

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