彼の微笑、私の余韻



ボソボソと自信無さげに、双眸が揺れた。いつだって、そうだ。ネガティブで、ポジティブな所を見たことがない。今も相談に乗りながら……ネガティブなことを聞かされている。もうあたって砕ければいいのに。疲れる。本当に。これじゃあ、ある種の洗脳だよ。こんなこと言っているけれど、私は速水が嫌いなわけではない。寧ろ、そういう意味で好きだ。だからこそ、こうやって彼の相談に乗ってあげているのだ。だけど、いい加減限界だ。



「どうせ、俺なんか無理に決まっている……」こんな感じである。「とりあえず、アピールとかしてみてよ。それやんないで言っているでしょ、絶対。努力してから、とりあえず私に相談してくれないかな……?」大体、速水の好きな子すら知らない。だから、当事者ではないこれ以上のアドバイスは出来ない。ズズズ、ともう氷が溶けて水だけしか入っていないコップを少しだけ傾けてストローをすった。かなり薄くなってしまったオレンジジュースの風味が微妙に口の中に広がった。お店の時計に目を向けたら、かれこれ三十分は居るらしい。飽きもきているし、ジュースは空になった。何か、小腹は減ってきた。



「だって……俺アピールはしているのに、全然手ごたえがない……」はああ……と大きなため息をつきながら、曇天模様の空から視線を下に落とした。「嘘ぉ?!速水と同じクラスだけどそんな現場見たことないよ?」「本当……。もうだめだ。俺なんて……」「……」速水の言葉のレパートリー少なすぎる。口を開けば「ダメだ」、「俺なんて……」って感じで頭を抱えてしまいたいのは私のほうだ。これだけ、相談とか愚痴に乗ってあげているのならば速水の好きなこの名前くらい聞いても罰は当たらないだろう。



「速水……いい加減、好きな子の名前くらい……教えてくれない?協力してあげるからさぁ……」視線をメニューに向けて、適当に美味しそうなスイーツを吟味しながら聞いてみた。何かをしていなければ、ならないと思ってしまうのは少しだけ病的だ。速水のことは好きだけど、やっぱり幸せになって欲しい、の方が勝っていた。お人よし?嫌、私利私欲に塗れているよ。こうしていれば、速水と一緒に居る時間ができるし。結局、私は人間だ。「……無理ですぅ……!ばれちゃいます!」「い、イニシャルだけでも……」「だ、だから……っ、名前が好きなんですう!」行き成り大声を出して立ち上がって逃げ去る様に雨がぽつぽつ窓を叩き始めた中走り去って行ってしまった。うぉおい、急展開だなぁ。速水には足では勝てないし、明日の朝学校で待ち伏せしていいお返事を返そうと思う。


Title カカリア

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