本当は思ってないけど、一応ごめんね



「あれ……?俺のシャーペン何処いったか……名前知っているか?」星降が素っ頓狂な声をあげて、筆箱からシャーペンやペンやらを全て机の上にだして隣の席の私に尋ねてきた。私はそれに苦笑した。そんなに大事な物だったのだろうか?って「えー……?知らないよ。さっき理科室では見たんだけど置いてきたんじゃない?」「……ああ、そういえば、前の授業では使っていたな……。俺が、忘れていっただけ……?」首を軽く捻って、後で一回理科室に寄るか……と星降が呟いた。今は数学の授業中、まさか教室から出るわけにはいかない。先生の目の前を横切るなんてどれだけ肝が据わっているんだろうか。私には絶対無理だね。予備のシャーペンの芯と消しゴムを机の隅に置くと、星降は先ほど出した文房具たちを筆箱の中へと戻していった。



「星降いつも、あれ使っているもんねぇ〜」「使いやすいからね……」星降はそういって、何処か落ち着かないように予備のシャーペンをノートに滑らせた。少し不満げだった。やはりいつものやつじゃないと落ち着かないのだろう。私は数学の教科書で顔を隠すと耐え切れずに笑った。声もあげずに笑った。目の前に一杯に広がる数式には興味を抱けない。
あのね残念だけど、理科室に行ってもシャーペンは見つからないよ。見つかるわけがないよ。星降に見えないように自分の片手をポケットに突っ込むと、硬いものにあたった。それは、星降のシャーペンだった。さっき、移動教室のとき三途が目を離したすきにいただいておいたのだ。物を取るのは泥棒。そんなことは知っている、幼稚園児だって知っているような事柄。だけど、どうしても彼の持ち物が欲しかったのだ。



歪んだ恋心だということを、気づけないほど馬鹿ではないが。とめられなかった。これが、私の宝物になるのだから。付き合えなくてもいいの。好きになってもらわなくてもいいの。だから……シャーペン一本くらい、いいよね?いいよね……?こうして、肌身離さず持っていると、彼と一緒に居られるのだ、と錯覚を起こしてしまう。勿論、星降の心は手に入らないと知っている。見つかっても平気。紛れ込んだんだ、と言い訳を重ねれば星降は疑わない。でも、これは家で保管するから多分永遠に見つからないだろうけれどね。


Title Mr.RUSSO

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