恒例行事だよ!



誰にも落ちません。



夜の尾刈斗中はとても薄暗くて、本当正直昼間でもぶっちゃけ、何かでると思う。というか、前に噂で尾刈斗中は一度墓地を潰して、立てた……と友達が言っていたのだが、本当なのだろうか?流石に冗談だと思いたいのだが、確かに噂は絶えずそこら中に散らばっている七不思議どころではないらしいほどの膨大な数だとかなんだとか。そらにそれに拍車をかけるように、恒例行事と称した怪談話がサッカー部では代々あるようで。名前はなんだか泣きたくなった。帰りたい気持ちでいっぱいなのだが……。どうにもそれは許して貰えそうにも無いのだ。



皆で、真ん中の蝋燭を囲むように座っている。他に明かりは存在しなく仄暗く照らす。私は膝を抱えながら俯く。一部の部員は用事だのなんだので逃げやがった。私も、用事があるといったのだけど幽谷の奴に強制的に参加させられた。「うぅ……。も、もう、やめようよ……。まじで、なんかでるって……!せめて明るいとこでやろう?」 「……駄目。これ、恒例行事だ。去年もやった。それに、明るいところなど意味がない、出る物も出られなくなるだろう?」 三途にばっさりと、切り捨てられてしまった。そりゃないぜ……。勝手にサッカー部の連中だけでやってりゃいいじゃない。マネージャーを巻き込むなよ……。関係ないだろう?



「ねぇ……私は除外でいいでしょ?ねぇ?八墓さん。頼みますよ。このとーりです!今度何か奢るから!」 目の前で手をぱんっと、あわせて八墓に頼む。ちらりと表情を伺うが、八墓の赤い瞳は長い髪の毛に隠れていて見えなかった。 「……そういうわけにもいかない……。頼むのなら俺ではなく、せめて幽谷に頼め。まあ、……駄目だと言うと思うが」… …一年とはいえ、流石キャプテンというところだろうか。自分に権限はない、と言わんばかりにそれ以上は何も答えてくれなかった。ゆさゆさと体を揺すって再度頼むが、座っていろ。言われてしまった。



「じゃ、俺から話すぞ」覆面をかぶっている魔界君が流れをぶった切った。この覆面が可愛らしくてなんだか尾刈斗のマスコットって感じがする。覆面を剥いでやりたくなるのは私だけか?因みに覆面を剥ごうとしたら、全力で拒絶されたという過去がある。酷い話だよ。ちょっとしたお茶目じゃないか。「その昔な……学校の二年一組の教室で、苛められていた女子生徒がその教室で……「うわあああ!やめてええ!!私の教室なんだからぁああ!」魔界が話をするのを遮るように、叫んだ。 周りは煩い、といわんばかり顔をしかめていた。そんな中、幽谷は涼しい顔で尋ねてきた。「名前さん、一組でしたっけ?」



「一組だよぉ……。だから、やめてよぉ……こわいよぉ」「なら、都合がいいですね。さ、続けてください」こいつ……エスなんてものじゃない……ドエスだ。鬼畜だ。間違いなく、誰かを苛めて楽しむタイプだ。怖い……一年の癖に怖い、敬語もなんか棘がある気がするんだけど気のせい?絶対私のこと先輩とか、思っていないよこいつ。敬えとまでは言わないけれど、少しは先輩だと思っていてほしい。こういう奴は都合が悪い時でも態度を変えないタイプだからなおのこと腹立たしいのだ。「……つ、続けていいのか?俺、凄いびびったよ……」魔界君は怪談より、私の叫び声に吃驚した人らしい。というか、三途君もビビっていたらしい。八墓君は意外と肝が据わっているのか慣れているのか、いつもの涼しげな様子だったが。



「鬼ぃ〜!!三途とめてよぉ!寝られなくなる!」再び三途に縋り付いた。 きっと、きっと、三途なら何とかしてくれる……はずだ!「……仕方ない」この言葉を聞いて、一瞬パァッと顔を明るくさせ、期待に胸を膨らませたのだが…すぐに、次の言葉を聞いて落胆してしまった。世の中はうまくできていない。寧ろ辛いことばかりだ。「今日は、俺の部屋に泊まれ。大丈夫、寝られなくても俺がいる」はあー……とため息をついて、おいでおいでと手招きをしてきた。「そういう意味じゃないわっ!”とめる”の意味が違うっ!こいつらの暴走を止めてと言っているんだよ!」「暴走しているのは、名前さんでしょう。そんなに嫌なのですかね。まったく……仕方ないですね。ほら、怖いなら手くらいなら貸してあげてもいいですよ?」



幽谷が左手を私の方に差し出してきた。何?繋いでやんよってこと?蝋燭の炎が揺れてぼんやりと見えた。「いらん。ドエスがうつる!何か上から目線だし!」「……なんですか?ドエスって。上から目線とか被害妄想にも程がありますよ?」幽谷はきょとんとした表情を浮かべ、渋々と左手を戻した。ドエスを知らないあたりは意外と純粋?私の方が穢れているんですか、そうですか。ドエスの意味は友達や先生に聞いたら駄目だぞ。幽谷君。しかし、これ以上いったら明日酷い目に遭いそうだからやめておこう……。いや今から、遭うのだろうか…?



「……もう、やめよう。なんか名前が本気で嫌がっているようだし……。明日も朝練あるんだろ?」「八墓……。君は尾狩斗中の良心だ……。恐ろしいドエスで生意気な一年と、意味を理解してくれない同級生と空気を読まないマスコットやらで泣きそうだったんだ。」八墓を後ろからぎゅーっと抱きしめて顔を摺り寄せた。八墓は特に動じることもなく、静かに座っていた。 「あっ!ちょっと何しているんですかっ!やめてくださいよ!私のは断ったくせに……!」幽谷がいきなり立ち上がって、なぜか私を引き剥がしにかかってきた。意味もわからずに足掻いていると、何処からか生温い風が吹いてきて蝋燭の炎が消えてしまった。再び尾刈斗中の校舎に私の悲鳴が木霊した。

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