愛を語るには遅すぎたのだ



狂愛


ああ、名前、名前。何処にいったんだい?お仕置きが必要なようだね。僕の元から逃げるなんて、本当名前は馬鹿なんだから。だから、僕はね口うるさくいつもちゃんと勉強しろというんだよ。そうか、犬や動物のように躾が必要なんだね。人間を飼育する方法なんてどの参考書にも書いていないけれど、大丈夫。僕もちゃんと勉強するから、ね?安心して。成功する確率の方が高いからさ。ああ、それにしても本当、何処にいっちゃったんだろう。若しかして、僕の買ったこの首輪の色、気に入らなかったのかな。それは悪いことしちゃったな。名前の好きな色、今度は買ってあげるからね。だから、それで許してほしい。



「名前〜?」至極、優しそうでこの状況に不釣合いな声が、渡り廊下に響いた。こんな時間まで隠れるなんていけない子だ、もう誰も居ないしね。見回りの時間もまだだよ。あ、遊びたいのかな?僕と。かくれんぼかい?小学生のころそんな遊びをしたような気もするけれど、そのときから僕はすでに、勉強勉強の毎日で勉強漬けだったから……そんな遊びあまりしたこともないよ。僕が鬼なのかい?ふぅーん……僕が鬼、か。九十三パーセントの確率で君は、教室にいる。沢山ある教室から此処を選ぶ理由は恐らく、僕らの学年とまるで関係がなくて、沢山あるからばれないという思惑から。ふふふ、僕から逃げられないよ?残念だったね、お遊びとしては楽しくないだろうか?ガラリと乱暴に教室のドアを開ける。可笑しい、居ない。気配を殺しているのか、誰も居ないように感じる。ぐるり、双眸で教室を見回した。しん、と静まり返っている。



「……名前?何処にいるんだい?」僕をごまかせると思っているのかな?僕がどれだけ君の事を愛しているかわかっている?成績が落ちて両親には君と別れろって言われたけれど、そんなことしてしまえば僕、死んじゃうよ。だって、あいつら毒親だもの。成績が落ちたのは確かだけど、さ。だって、勉強に手がつかなかったんだ。名前が僕のこと嫌いになった、とか別れたいとか言うから!でも、僕は考えた。名前一人のせいじゃないってね。僕がちゃんと名前のことわかってあげていなかったからだよね。そうだ、名前のこと沢山愛してやれなかったから!早く探して、名前のこと大好きだよって言ってあげないと。沢山、何万回もね。それから僕と一緒にうちに帰ろうね。でも勝手に抜け出したことは少しお仕置きしないとね。



ガタン、金属音のする少し埃っぽい掃除用具入れを空けると、大きく瞳を開けた名前が脅えたように顔を上げた。「い、や……。ご、ごめんなさ、」「何を謝っているんだい?もうかくれんぼは、おしまいだよ」ぶるぶる小刻みに震えている名前をそっと抱きしめた。金属音が煩い。なんなんだ、さっきから、うるさくて煩くて仕方ない。さあ、もう帰ろう?「お願い、離し……て。もうやだ、怖い」「何が?」何が怖いんだい、愛されるのは怖い事なのだろうか?いや、僕の予想、計算、では。……わかりきっているんだ。何もかもね、把握しているんだ、例えば、僕はもう君の恋人じゃないってこととか。これから起こそうとしていることも、ネ。


title 箱庭

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