骨格にくちづけ



このままじゃ飢えてしーんじゃーうーとか、さっきから騒ぎ立てているのは一応この城の主であるヴァンプである。これに拉致されて随分と長いこと一緒に過ごしているのだが、彼は基本的に無害である(お腹すいた、吸わせてよ血。だとか、行き成りなんの前触れも無く抱きすくめてきたりはあるのだが無理強いは今までになかった。ただの一度もだ。この点彼はとても善良な人間?である事が伺えるだろう)。「このまま血がすえないと僕は、飢えて死んじゃうよ!」「じゃあ、そのまま飢えるといいよ。私はヴァンプ達の仲間に成りたくないから嫌だし」「名前って冷たいよね。僕はこんなに腹ペコで死んじゃいそうなのに。ああ、これも運命なのかなぁ、」なんて縁起でもない事をいいながら、演技を続ける。私は何の演劇を見せつけられているのだろう。別に見たくはないのだが。



「だって、トマトジュースは飽きたんだよ。あんなの血じゃないしさ。だけど、人間を襲うのは美しくないだろう?」あの古臭い映画のような吸血鬼なんてとうの昔に滅んでしまって、今はもう絶滅危惧種のような存在らしい。その点ガルシャア達は変わりがないのは何故だろう?血気盛んなのはいいのだが、ヴァンプと居る私を睨みつけては喉から出てくる地を這うような低いうなり声が恐ろしくてたまらないのだ。そのたびに身を挺してくれるヴァンプの優しさは一体何処から来るのだろう。兎に角ヴァンプはあらゆる災厄などから守ってくれるので一緒に居て、損はないのでこのまま拉致られたままでいいかなと思っている。セカンドステージチルドレンにだって、きっとヴァンプといたら目をつけられることだってないだろうし。



ただ、ヴァンプから言わせれば彼らは自分たちと似ているが、異なる存在らしいのだ。私にはあまりよくわからない、超能力などを使える彼らとヴァンプの大きな違いとは何なのか。そもそも、私もヴァンプも同じ人の形を模しているのに、何が違うというのだろう。やはり食べ物か、それとも能力なのか。「いいんだ、別に。僕はね君が僕たちの仲間にどうしてもなりたくないって言うならそれも運命だと思っているしね、僕は無理強いはさせたくないし、人間のままの君も十分に魅力的で素敵だと思う。僕は君を愛しているからそう思うんだ」と何と、恥じらいも見せずに愛の言葉を囁いて、私の髪の毛をひとふさ掬って口づけた。



「本当はね、私は別にヴァンプ達と同じに成ってもいいと思うんだよね。ただ怖かっただけ、人間じゃないものに成ったらもう二度と戻れないのはわかるから。人間として死ねなくなるのが怖いんだよ」「うん、でもね、その方がサル達も絶対に手にかけようなんて思わないし安全策だと思うんだ。僕はそう思う」「それにね、きっと、私ヴァンプが本当に飢え死にしちゃったら嫌だと思うの。ヴァンプは優しいから最後まで拒絶したら私の血は吸わないから。私もヴァンプが好きだと思うの」そういうとヴァンプは髪の毛にもう一度口づけて、首筋に口を寄せた。ちゅっと軽く、リップノイズを残して歯を立てた。「僕はね、優しくなんかないよ。でも、これも運命かもしれないね」

title 月にユダ

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