さあ、古い遊びをしましょう



「名前さぁん。ふるーいお遊びを見つけたので試しませんかぁ?」まあ、邪魔な男どももいるんですけどぉと若干、ガンマとアルファを睨みつけた。紙の束とペンを持ってきて邪気のないような笑顔を浮かべていたベータに名前は不思議そうに首を傾げた。名前は古い書物を読み漁ったりするのが好きなので、古い時代の文化や遊びにも結構詳しいようであったが「いつ何処で誰が誰とどうしたゲーム」を知らなかったようであった。ベータは珍しいこともあるものだとクスクスいつものように笑いながらさぁさぁやりましょうと手を握った。それはあまりにも熱っぽくて、ただの女同士の友情の枠はとっくに超えているように見えた。男たちは面白くなさそうにそれを見ていたが名前は自分の知らないゲームに乗り気であってすぐにベータの誘いにホイホイとついて行ってしまったので後をついて行った。勿論、アルファもガンマもやる気であった。



ルールは実に簡単であった。恐らは古い人類ならば大抵は知っているであろうルールである。いつ、何処で、誰が、どうした、かという紙を皆で書いて四つ折りくらいにしてランダムで選ぶというあれだ!現代人にはきっとなじみない事であろう。



楽しいゲームの開始の合図はとっくの前に鳴っていた。それはふんわりとした自然な形だったので、違和感は無かった。皆がバラバラに、折った白い紙をかき混ぜている。「さあ、まずはこの僕が引くよ!スマート!」スマートという掛け声とともに混ざった紙を一つずつ取ってワクワクしながら開いていく「明日僕の部屋で!名前が」それまでワクワクしていたガンマの顔色がみるみる内に悪くなっていった元々白い肌なのだがそれが青白く見える。「うぇええ、気分が悪い」さっさと内容を見せろとアルファに白い紙を取り上げられるそして、アルファも無言で紙をもとの形に戻した。「え、なんだったの?!私が?!」「……ベータとキスだそうだ」「きゃはっ、今すぐ現実の物にしましょう!?ねっねっ!」「のぉお!」「なんで、アルファが答えますの?名前に言ったんですぅ」



二回戦目。次に引いたのはアルファだった。「今すぐ、エルドラド本部でスマートな僕……?ああ、ガンマか。ガンマと……、ぷぷっ」「なに笑っているんだ!気持ち悪い!」名前を呼ばれたガンマが酷く不機嫌そうに続きはどうしたんだい?早く言ってくれよ!と急かした。「サカマキさんとデートする。ぷぷっ。さっさと現実のものにしてくるといい」「す、スマートじゃない……、」ぶるぶると震えながら想像もしたくないと身を捩り、頭をぶんぶんと振って振り払おうとしていたが、無駄なあがきの様であった。悪夢のような状況が事細かに頭の中に浮かんでくる。「あらまぁ、お似合いですこと。サカマキさんと書いた人は見当が付きますけど、」ちらりと名前を見やると名前がテヘペロと舌を軽く出した。どうやら名前が書いたらしい。



三回戦目、そろそろこのゲームを提案した人々が自分の望む結果を見たくなってくる頃合いだといってもベータはもう叶ったようなものだが。それでも更に上の結末が見たいのは当然の心理である。名前が引く「えーと何々、フェーダの本拠地でベータが、アルファと結婚式を挙げる。カオスだね、あそこで結婚式とか」名前は楽しんでいるようだったが面白くない人も居る。「……殺す。私と名前のウェディングを破壊しやがってこの根暗野郎」「ノー、迎撃する。容赦は、しない」ベータの殺気立った瞳がアルファを睥睨したが、アルファは負けじと睨み返して来て攻防が続いた。「……名前とウェディング……私が」アルファは勝手に自分との結婚式を想像して、口元をだらしなくにやけさせていた。幸せそうである。ガンマは眉根を寄せている。「誰だよ、名前以外の名前を書いて夢を壊すスマートじゃない奴は、……そもそも、ベータと名前の場合はどっちが、ドレスを着るんだい……、僕は名前に着てほしいけれど」純粋な疑問である。「ダブルで、着てもいいし、私がタキシードでも、名前がタキシードでも素敵ですねっ!うふふ、想像していただけで」じゅるりと自然と分泌されてきたものを啜ってベータがうっとりと溜息をついた。少しは勘付いていたのだがこれで本気で名前を好いているという事がわかってアルファとガンマが戦慄したのにベータは気が付かない。矢張り、ベータはノンケではなくビアンさんだったのである。



そうだ、此処に集まった四人中三人が名前との理想を書いたのだ。そして物の見事にぶち壊されている。結局誰ひとりとして理想を掲げられる人は居なかったそうな。閉幕。

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