宇宙の卵



若しも、今此処に宇宙船があったならば今すぐに飛び乗って君のいる星までとんでいくのになぁ。思いと裏腹に宇宙船なんてものはもう、此処には無くて。人々も何事も無かったかのように、本当に忙しそうに歩みを速めている。星々の煌めきを見ていると感傷的な気分に成るのは君に恋をしていたから。星々の煌めきに愛しさを覚えるのは君を愛していたから。逢いたいなぁ、って言葉はいつだって零れ落ちて地面に突き刺さるだけ。誰にも聞こえない呟き。



あの時に敵対していたから隠そうと決めた。二度目に逢った時は敵対なんかしていなかった。だけど、私は何も言えなかった、カゼルマの姿を見ても何も言えなかった。惑星が違うのだから、こんな感情間違っていると抑制して殺して。お別れの時にそのごつごつとした固い皮膚の手と握手をして別れた。君はもう、私なんて忘れてしまっただろうか、砂の流れる音ももう聞こえない。貴方の目には私はどう映ったのだろうか、異形の者か、醜い生き物か。ただひ弱な生き物か。それすらも、今の私には知るすべもない。



私はきっと、これから何年後も何十年後も君を覚えているだろう。何度も思い出すだろう、誇り高いサンドリアスの戦士の君を。君の中で私が死んでしまって、居なくなったとしても。たった、一度の触れ合いそれだけで。星々を見上げてどれが、惑星サンドリアスなのか、わからずに泣きそうになった。若しかしたら私の見えている星屑の中にサンドリアスは無いかもしれない、そんな可能性も存在するという事すらも知りながら。一つ一つ、どれだろうどれだろうとおもちゃを取り上げられた子供が必死に、手探りと勘を頼りに玩具を探すように、探した。



何処が君のいる星なんだろう、今、此処にね、宇宙船があったならば、私はその宇宙船に駆け込んで君のいる星に今すぐ飛んでいくのにね。それから、家族や友人にもう二度と逢えないということに嘆くのかな、それでも、今すぐに逢いたいと願うのは罪なのかなぁ。「ああ、サンドリアスが見えないよ」月は戻った、きっと、月の光が強すぎて見えないんだよ、都会の光が雲が汚いスモッグが、何もかもが私を許してくれなくて邪魔をしてくるんだよ。昼はもっと駄目、星の煌めきをわからなくしてしまう。「……見えないよ、せめて、君のいる星が見えたらいいのにな、君が見えたらいいのにな」贅沢なことなのかな。やっぱり、いつもの言葉は誰にも聞かれずに零れては地面で弾けた。



でも、この広大な宇宙の何処かに君がいるんだよね、きっと、いるんだよね。

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