春夏秋冬



春、貴方に出会って貴方を好きに成った。キラキラ光る海のさざめきに似ている貴方を好きに成った。長髪を風に靡かせて、守備の一角を守る、貴方の闘志に燃えた瞳が好きだった。そんな貴方と付き合えるということになった時は、もうこの世界が反転するんじゃないかというくらいに驚いた。それから、龍崎君の事をもっともっと好きに成った。永劫に続けばいいのにね。永劫に。



夏、彼の好きな物をどんどんと私も好きに成っていった。食べ物、趣味、好きな色に、うん、兎に角私は興味がなかった物でも何でも好きに成っていった。真綿が水を吸う如くドンドン吸収していった。私は重たい女だったのかもしれない。だけど、彼と同じものを共有していることで、私は龍崎君といつでも一緒で特別な気持ちに浸れるような気がしたのだ。嬉しかったのだ。(そんなものは、幻想、幻想。幻視に捕われているの)



秋、貴方と別れることになった。私は酷く荒れた。彼の好きだったものが大嫌いなった。心から龍崎君を追い出したくて、沢山色々な物を処分した、追い出した。さようならの準備をするのはとても大変で難儀であったけれど、それ以上に大嫌い(大好き)!という気持ちが勝ってしまって、彼の好きだったものすべてを破壊したくなってしまった。もう、何も好きじゃない、彼の事なんて好きじゃないし、壊した。力任せにかき消そうとした。そんなことしたって、無駄だって知りながら。



冬、龍崎君の好きだったもの殆どを失わせた。龍崎君の事が本当に大好きだったから許せなかった。別れを切り出したのは向こう。私は何が悪かったのか?とかも教えて貰えなくて、ただ「別れよう」と私の好きだった瞳をかち合わせて、言ったのだ。私は龍崎君が大嫌いに成りたかった。彼は理不尽でとっても身勝手だ。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い、呪文のように何度も何度も唱えてみたけれど私は、君の事を本気で嫌いに成れなかった。


私は君の事が好きだった。

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