人間の子供



暴力と、マゾい表現あり。


痛みを感じることで、若しかしたら生きているという感覚を掴んでいたのかもしれない。と、そう思った時にまた、右足が風を切って僕のお腹にうまい具合にクリーンヒットした。最早手慣れていると言っても過言ではないし、事実である。僕は彼女に命令していつもやらせているのだ。あまり手加減されていないそれに先ほど食べたものを、そのまま吐き戻してしまいそうだったが、此処で吐瀉物をまき散らせば更に痛めつけられるのはわかりきっていることだった。僕がそうしろって言っているからそう。「マビはただのマゾなの?だとしたら相当、気持ち悪い」違う、僕は肉体的に痛めつけられるのも精神的に痛めつけられるのも嫌いだ。だけど、へらへら顔は笑ったままへばりついて、こびりついて離れない。



「でも、僕は名前に殺されたいです」「それは、逃避かもよ」いつも嬉しそうに尻尾を振る癖に、死にたいだなんてセカンドステージチルドレンの奴らは頭が可笑しいんですね。勿論マビも、例に漏れず。痛めつけられてへらへら笑って。信じられないと軽蔑しきったような瞳で僕を見下ろす。僕は蹲ったままだ。僕が念動力を使えば簡単に内臓とかまき散らして死ぬのに、僕は絶対にそれをしない。僕は名前に殺されたいからだ。「最後の幕引きは貴女じゃないとできない」カーテンを閉めるのは、幕を下ろすのは。そういうとまた蹴られた。痛い。



でも、痛いと言うだけで僕はやっぱり何もしなかった。昔は僕に危害を加える者には容赦なく僕の意思と関係なく力が暴走して襲って、殺したりしたものだが今は僕自身が制御できるようになっているので暴走はしない。多分、死にかけても暴走しないと踏んでいるのだが、少々自信が無く欠けていた。若しかしたら野性的な生存本能が働いて名前を殺してしまうかもしれない。でも「名前に殺されたらきっと、人間として死ねる気がするんですよ、僕」唯一、痛みを知ることで僕はまだ、そちらに、……元に戻れると思っていたのかもしれない。



「そんなわけないよ、マビはセカンドステージチルドレンだもの。人間としてなんか死ねないよ、マビを殺すよりも先に私が死んじゃう。痛みを知って、何に成るの、人類に成りたいの?私こんなことするの本当は怖いんだよ、だってマビは本気出したら私なんか殺せちゃうもの。それが私とマビの違いだよ」「違わない!僕は、名前と、名前と同じ」人間の子供なんだ。って言いたかった、だけど声は涙で掠れて出てこなくてタイルを濡らしただけだった。苦しい、呼吸困難に陥ったようにはぁ、はぁ、と息を整えようとするたびに人間離れした何かが僕を必死に成って救おうとしている。生存本能が働いたらしい。直ぐに楽に成った。



「ほらね。マビは死ねないよ。寿命まできっと、生きなきゃいけないんだよ」セカンドステージチルドレンとして死ぬんだよ。私たちとなんかは違う、そういった。見えない壁が僕たちを隔てている。僕はもうそちらへ行けないと知りながら通行許可証をくれとせがみ、偉い人に頼んでいるのだ。外見は同じ人間の子供なのに、ね。「……死にたい」苦しくて自殺を図っても生存の能力が僕を殺してくれない。ただ、短い寿命を無理やりに享受させられる。苦しいだけだ、どんなに酷い怪我をしても蹴られても殴られても人形のようにまた、元通りだ。「死にたい」「死ねないよ。能力が死なない限り、マビは死ねないよ」僕は何の子供?

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