垂れ流す君への想い



兄妹



兄妹なのに、全然似てないね。そう、いわれた。昔から言われていた。照美のほうが、綺麗で美人さんでそれに対して私は照美に全然似ていない。髪の色さえも違う。本当は、私は照美と兄妹じゃなくて捨て子だったのかな?だから、似ていないのかな?って子供心に思った時期もあった。今は、少しでも照美に近づきたくて、髪を伸ばして金色に染めた。だけど……照美の髪は綺麗な琥珀色なのに、自分の髪の毛はくすんだ色。所詮、作り物……紛い物だと嘲笑われた気分だった。私は何を期待していたのだろう。照美のような、綺麗な髪を期待していたのだろうか?人工で作られたそれは、本物の美しさではないのに。



「何で染めちゃったんだい?」私の勉強用の椅子に座って、私に視線を落とす。椅子を取られてしまった私は仕方なく地べたに座る。ひんやりとした床の冷たさに少し顔を顰めた。クッションか何かをしくべきだった。「私、照美みたいになりたかったの」そういうと、照美はキョトンと目を丸くした。そして、自分の髪の毛を少し手で撫ぜた。絡まることもない、それには嫉妬を覚える。私の髪なんか、少し櫛を通すだけですぐにひっかかるのに。「僕はね、名前の前の髪好きだったんだけどな。僕の髪にはない、美しさがあったと思うよ」



私を宥めるためのお世辞だろうか。心にもないことを、と怒りが沸いてきた。「照美にはわからないよ、私の気持ちなんて」「わからないね。何、好きな男でもできたの?」仄暗い赤が睨む。それに少しだけ怯みながらも首を横に振った。照美の瞳がたまに怖いと感じるときがある。昔はそのアルビノな瞳も、美しい金色も透けるように白い肌も羨ましくて大好きだったのに。



「私たちが、似ていないから」何かを思案するように目を閉じて、足を組みかえる。その動作が、あまりにも自然で息を呑む。アプロディーテと比喩されるのがよくわかる。わが兄……照美は美しい。陶酔し、眩暈を覚えるほどに。「まだ、酷いこと言う人いる?」「ううん、違うの」自分のズボンの裾を握り締めて、俯く。前に男子にからかわれていたときや、酷いことを言われたときに真っ先に庇ってくれたのは友達でも親でも誰でもなく、照美だった。それこそ身を挺してまで庇ってくれたときもある。兄妹愛などと馬鹿にされたこともあったけれど、私たちのあり方はいつだってそうだった。



「でも、僕はよかったと思っているよ」照美が、たまに見せる人を見下したような笑みではない優しい笑みを浮かべる。思えば、一時期よりもやわらかくなった。誰のおかげかはわからないけれど、今の優しい笑顔は大好きだ。「何で?」「僕は、今の名前のほうが好きだから」手の甲で、優しく頬を撫ぜて女神の微笑を浮かべた。勿論僕と似た金髪もいいけれどね、ほら、自分と同じだと思えるだろう。だけど、これもこれで愛しい物だ。と私の頬に口づけるのだ。

title Mr.RUSSO

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