お願い、あと10秒だけ



ゲームしたときに書いた奴。


地球の女の子に逢った時、僕は残り少ない命の中、絶対にこの子だ!って思ったんだ。それってもはや、運命だと思うんだ。だって、本当に残りあとちょっとって時にあんな素敵な女の子に出会うんだよ?これは神様の贈り物かもしれない!僕は本気も本気、すっごく本気!絶対に死ぬ前に輝きたいし、僕の彼女に成ってもらいたいな!でも、異星人か。あの子は抵抗あるかな?僕の事、少しでも好きに成ってくれるかな?成ってくれたら凄く、嬉しいな。僕の最初で最後の恋だもの!



なんかよくわからないけど、男の子に告白された。人生初めての告白です。でも、地球の男の子じゃないの。よくわからないけど、虫が進化したみたいな男の子。最初えーって思った。嬉しくないわけでもないけど、だって、まだ全然話してもいないし、そもそも、人間じゃないし、急に何?とか怖いみたいな吃驚の気持ちの方が勝っちゃって、冷たく当たっちゃった。悪気があるわけでもなし、他の星の人たちと違って友好的だし、余計にわけがわからなくて頭の中で、コードが複雑に絡まったみたい。大変だ、もしかして、ふざけているのかな。とてもそんな子には見えなかったけどな……。



ふざけているの?って言われちゃったよ。睨みつけられちゃった、でも笑顔で返しておいた。印象って大事だもんね!どうして怒るの?って聞いたらさ、僕の言葉が信じられないんだって、じゃあ、どうして僕の言葉を信じてくれないの?って聞いたら、一目でそんな事を言う奴(まして異星人ならなおの事)は信用ならないって。可笑しいなぁ、ラトニークでは日常茶飯事だけどね一日で求婚とか結婚とか、僕のお父さんとお母さんも一日で惹かれあったって言っていた、お母さんもお父さんもね、一目見て運命だ!って思ったんだって!僕それに凄く凄く憧れていたけど一度もそんなことなかったから、僕には運命なんて無いのかな……って思っていた所だったんだ。だから僕はこれを余計に運命だって思うんだ。ってなわけで、やっぱり僕らにとっては普通の事なんだけど、地球ではあんまりそういうことはないんだって。曰く、何週間とか何か月、酷い時は年単位で恋愛をするらしい。信じられない!そんなに日が経っちゃうと僕たち死んじゃうよ!短い人だと一週間も持たないのにね!何でも急がないと、後悔は残したくないから。



どうやら、ふざけているわけではないらしい。この星の住人の命は長くて一年程度、平均だと一か月くらいだって。地球の感覚から行ったらあり得ない。彼も、自分の寿命を把握していて、予定では明日らしい。今日もどうしても君に逢いたくて!って私の所に転がり込んできた。明日って聞くとなんだか哀れに思ってしまい、私は彼を招き入れた。別に何があるわけでもない、地球の感覚を教えたから彼もどうこうするつもりは無いようだし。彼の興味はそう、あふれ出る泉の様だ。枯れることのない。なんでも興味を示し、知りたがる。そして、楽しそうによく笑う、本当に寿命は明日なのかってくらい。私だったら落ち込みすぎて抑うつ状態に成ると思うのに、彼は強いな。



地球の事も沢山教えて貰ったしそれから、名前さんの事も沢山聞けた!沢山知れて、僕は幸せに成れた。あと、名前さんは楽しい会話の最中も悲しそうな顔を時たまにしていて、なんで悲しい顔をするんだろう?って思った。悲しい事なんて何一つないよ、って言ったら、バンダは強いんだねって言われた。嬉しかったけど僕は別に強くないから、そんなことないよって言っておいた。地球の感覚からすれば(と言っても地球人は細かく分類されているようで様々らしいのだけど)死は悲しい物らしい。僕らの感覚からいったらさ、死は日常だし、常に背後に居るって感じで別に怖くもなんともない。お母さんとお父さんが死んだときも友達や仲間が死んだときも全然、悲しくなかったしね。ただ、もう逢えないのかーとか、後に成って、あ、あの話したかったなとか思うだけ。本当にそれだけ。友達と一日、数時間で決別したなんてよくある話だけどね。道端に転がっている石みたいだよ。



彼は凄い。明日が惜しい程に、話した。明日は絶対に輝きたいからと言って彼も眠くなったら私の傍で眠りに落ちた。全く無防備だ。他の星だったらあり得なかっただろうな、こんな無防備に敵の陣地内で眠りこけるなんて。私も気が付いたら眠りに落ちていて、起きた時は大きな葉っぱのようなものに私の身体がすっぽりと包まさっていた。それが通気性に優れていて程よい温かさだったので、随分とぐっすり寝てしまったらしい。起きたら意外と距離が近くて驚いた。「お早う!よく眠れた?」って。本当にこの子が今日、死んじゃうの……?こんなに、元気なのに。たちの悪い冗談だったらいいのに、この間目の前であっさりと死んでしまった彼の仲間の姿が、脳裏を過ってしまう。……バンダもあっさりと死んじゃうのかな……。なんだか嫌な気持ちが渦巻いている。



今日の試合には絶対に輝きたい、僕の最初で最後の試合なんだ。そして、輝いたらもう一度彼女に告白するんだ。例え僕の命が今日で最後であっても、……例え残りが数十分、数秒だとしても、最後は名前さんの傍に居たい、それから短い時間だけでも僕が恋人だったってたまに思い出してほしい(悲しまないで、ね)。そう意気込んで試合に臨んだのに。……だけど、僕はもう輝けなくても平気だった。……本当に大事なこと、教えて貰ったから。でも、まだ心残りがあるのだ。嫌だ、逝きたくない……名前さんに約束を……まだ、………………。



「バンダ?!」バンダがまだ試合も終わっていないのに急に倒れた。何の前兆も無かった。本当にあっさり。仲間は言った通り誰も悲しんでいなかった。ただ、九坂だけが酷く嘆き悲しんでいた。私もまたバンダに駆け寄り彼の手に自分の手を重ねて握りしめた。私は彼の本気から逃げて、何も答えなかった。こんなずるい形で終わっていいの?この試合が終わったら、改めて君に告白をしたいんだ!って言っていたじゃないの。ポタポタ、蛇口はきちんとしまっていないみたい。止まらない涙がバンダの頬に零れて伝っていく。このわけのわからない、感情を解くのに時間がかかる地球人を許してもらいたい。ようやく、わかりかけたのに……。ずるいよ、バンダ、こんな気持ちだけを置いていくなんて。


title Mr.RUSSO

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