はいはい



爽やかな程にテンプレート通りの決まりきった台詞を口にする。それでもめげない彼女には少しだけ驚かされる。幾度も重ねた、薄っぺらい愛情には少しだけ呆れてしまう。とりあえず、適当なテンプレート通りの受け答えをしておけば、何の衝突も起きないし問題もないだろう。「蘭丸!好き!」「……はいはい」俺が適当に答えてもやはりめげる様子は無い。俺だったら絶対に心が折れていると思う。シャーペンの芯よりも細い。名前は……何かな。



「蘭丸超可愛い!」「………っ……はいはい」可愛いは禁句だと何度言えば済むんだろうか。怒りを無理やり腹に戻して、俺は「はいはい」とだけ言った。早く今日も諦めて自分の席に戻ってくれ、頼むから。この通りだ、と嘆願しても無駄だろう。「蘭丸、付き合ってよ〜」「……はいはい。何処に付き合えばいいんだ?」勿論そういう意味ではないのは言わなくてもわかる。わざとに決まっているじゃないか。名前と付き合ったら俺が酷い目にあうこと確実だし……。名前のこと嫌いってわけじゃないけれど……そういう対象には見られないのが現実である。そもそも名前だって、そういう意味じゃないんだろうし。本当に俺のこと好きだって言うんだったら、まずこう派手なアタックはまずないだろうし。……周りはみーんな公認しているけれどさ。



「よし、蘭丸結婚しよう!私は本気だ!」「はいは……い?」俺がいつもの癖ではいはい。といい終わりかけたときに気がついた。あれ……?今、こいつなんていった?俺がまだことを理解し切れていないうちに名前が狂喜の声をあげた。凄く喜んでいる。俺は取り返しのつかないことをしてしまった気がしてならない。「あ……っ!えっ?!」「やった!蘭丸ちゃんを嫁にもらったよ!!」嫁?!俺、嫁なんだ?!普通は逆じゃないのか?俺がそういう風に言われるのが嫌いなの知っていて言ってくるし。「ちょ、しかも婿じゃない……!」



絶対いやだ!というより先に俺のつっこみの言葉が先に出てしまった。有難う、俺の突っ込みスキル……。「……いやとは言わないんだ?」ニマニマしながら名前が俺の頬をツンツン突いてきた。うん。俺も今それ、後悔していたところだ……。なんでつっこみからいれたんだろう……本当。「ってことで、私と蘭丸は結婚しますんで〜!」なんで、クラス中にそれを宣言するんだ!俺の公開処刑がすんだ後は俺にギュと抱きついてきた。柔らかな甘い香りが俺の鼻腔をついた。「……はあ」俺はため息をつきながら今後を憂う。この誤解を解くのにまた、俺は多大な努力を要するのだ。はちゃめちゃで、無茶苦茶だけど……。嫌いになれない俺は名前に毒されているんだ。それよりも、これからは名前相手に「はいはい」って流すのはやめよう。

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