懺悔の言葉は届かない



姉弟設定。悪意に満ち溢れています。恋愛要素はありません。



よく俺は学校で友達に半端だの中途半端だの馬鹿にされていた。勿論、本気で馬鹿にされているわけでも、苛められているわけでもない。ただ、友達同士の軽い冗談のようなもの。それは、苗字のせいでもあり、俺のせいでもあった。そんな俺にはよく出来た、姉がいた。成績表を見れば、俺では有り得ないようなことばかりが書いてあった。こんな中途半端な俺と違ってよく出来た、姉だった。俺は、そんな姉が誇らしくもあり、とても羨ましくもあった。



よく出来た姉だった。そう、だった。過去形である。そんな姉は、三年に上がったときに虐めを苦に、学校へ行くのをやめた。両親はとても嘆いた。後に残ったのは、俺だけだ。何をやらせても平凡な俺だけ。姉さんは、両親にとっても自慢の姉さんだったからショックだったのだろう。俺もショックだった。何より、不登校の姉さんが居るなんて嫌だったし。恥ずかしいとも思った。姉さんは俺のことなんか考えずに、自分のことだけを考えて学校へ行かなくなったのだと思うと、腹立たしくもあった。「俺、姉さんが恥ずかしい」



俺が姉さんにそういうと姉さんは、泣いた。泣けば済むとか思っているのだろうか。そんな姉さんが俺は腹立たしく思った。いつも、欲しいものは全部姉さんが手に入れてきたくせに、全部全部姉さんのものだったくせに、俺から全部奪ったくせに。才能も、愛も何もかも持っていたくせに。何で?「姉さんなんか*ねばいいんだ」俺は心の中で思っていた最低なことを口にしてしまった、と言った直後にハッと気が付いた。ただ苛々して仕方が無かった。冗談でも言っていい言葉と悪い言葉がある。そう、両親にも言われていたのに。姉さんは泣くのをやめて、最近になってから見せるようになった全てを諦めているような絶望したような目で笑っていた。それは自分を笑っているのか、この世界を笑っているのか俺にはわからなかったがただ、わかるのは、本当に心の底から面白いと思って笑っているわけではないということだ。




ああ……!ああ!!まさか、本当に*ぬとは思ってなかったんだよ。俺のせいじゃない。そんな言い訳がましいことが頭をぐわんぐわんと廻っていた。永遠と自分を正当化するようなそんな言い訳。だって、姉さんが、姉さんが。そんな単語が頭の中で沸いては消えてを繰り返す。ああ……そうだ、止めを刺したのはきっと、この俺だ。両親は俺が姉さんに言ったことなんて知らない、だからただ泣いていた。姉さんのことを愛していたから、泣いていたんだと思う。



俺が死んだところで果たして両親は此処まで泣いてくれるだろうか?何でもよく出来て、こなしていた姉さんだから?姉さんばかりずるい、ずるいよ。


ああ、本当、姉さんなんか、姉さんなんか、姉さんなんか……。でも、そんな俺も姉さんが好きだったんだろう。十年以上もずっと一緒だった姉さん。涙が止まらない。姉さんは優しかったのに。……今思えば、姉さんは完璧なんかじゃなかった、と思う。俺が中途半端だったのだから、姉さんも決して非凡だったわけではないと思う。中途半端といわれるのが嫌で、相当努力をしていたのではないだろうか。そんな、姉さんのことを知りもしなかった俺には責める権利も、まして……追い込む権利すらなかったのに。ごめんなさい、ごめんなさい。懺悔の言葉は届かない。


戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -