歪なピリオド



次:ファンファーレをあげましょう

ベータちゃんが居なくなった。リーダーで私の方が下の立場にあるというのにそれを気にするでもなく、まるでチームメイトではなく親友のように接してきたベータちゃんがだ。たった一回の失敗だけでムゲン牢獄だ、チャンスは与えられなかったらしい。私は何故かムゲン牢獄送りではなくチームに残ることに成った。私は嘆き悲しんだ。一日中、ベータちゃんの事を考えた。新しくリーダーに就任したのはガンマ様だ。「可哀想に、僕が傍に居てあげる」優しいけれどベータちゃんが居なくなってしまったのには変わりがない。ガンマ様にはベータちゃんの代わりなんか務められない。それでも優しく心に沁み渡っていくような言葉を投げかけてくる。話したことはないし、存在だけは知っていたけれども根はやさしい人なんだなと思った。



だけど、それは最初の内だけだった。最初は何度も何度も優しい言葉を投げかけてくれた。私はそれを頑なに拒絶していたら次第に面倒くさいものに触れるような言葉に変わってきた。「いい加減泣くのをやめてくれないか。今のリーダーは僕だろう。君のリーダーは僕だ」ベータじゃない。今のリーダーは僕で君は僕の物なんだ。って髪の毛をかきあげて随分と大儀そうに言った。「僕は君に随分と優しくして来たと思う。自分でもそう思うね。でも、君はベータベータって言って僕の事なんか見てくれやしない」ああ、詰まらない詰まらない。面白くない面白くない。と呟くように私を言葉で責めたてた。



「長い事ベータに君を取られていたからね、僕がリーダーに成れて本当によかったよ。ベータには勿論悪いとは思うよ。でも、僕は君が好きなんだ」「聞きたくないです。それに、貴方の気持ちに答えるのはベータちゃんを裏切ることになる気がするのです」「そんなことはないさ。きっとベータだって君が幸せになるのをムゲン牢獄で望んでいるはずさ」そんなわけがない、私はベータちゃんが居なくなって良かったなんて思わないし、思えない。友達のオルカだってベータちゃんが居なくなって悲しんでいる、もしもガンマ様と相思相愛だったとしてもベータちゃんの事を捨てたくなんかない。「貴方は酷いです」「酷い?何が?僕はずっと待っていたのに?」何処が酷いんだい。ベータはムゲン牢獄で己の弱さを今頃悔いているだろうねと憫笑するように言ったので悔しくなってまた泣いた。



「泣かないでくれよ、」私を白い壁際に押し付けて、瞼に口づけ涙をすくった。「僕が新しい君のリーダーに成ってあげるから、ね」吸い込まれそうな瞳に私はどうしようもなく泣きたくなった。「確かに今のリーダーはガンマ様です、でも」私にとっての、リーダーはいつまでもベータちゃんなんですって言おうとしたところ唇を無理矢理塞がれた。これはいくらなんでも職権乱用だと私が舌をガリッと音を立てて噛んでやると口を離したガンマ様が睥睨して口元を拭った。舌からは血が滲んでいた。「……君は本当に面白くないなぁ、」「面白くなくて結構です」だから、私のベータちゃんを返してください。ただ、ベータちゃんとサッカーを消して二人で笑い合う未来を過ごしていたかったのに。目の前のガンマ様の楽しそうな顔がまた懲りずに近づいてきた。次はどうしてくれよう、ベータちゃん、寂しいよ。二度目のキスに睫毛が濡れた。「泣かないで、大丈夫だよ。僕がベータの分まで愛してあげる。だから、ね」


title 月にユダ

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