好きだと言ってよ!



女々しいとは自分でも思うけれど、付き合っているという間柄ならば一度は「好き」だ、と愛を囁いて欲しいものだと思ってしまうのは、俺の我侭なのだろうか?やはり俺も人間だから言葉にしてもらえなければ、不安になってしまってそれに押しつぶされてしまいそうになってしまう(いくら、俺のメンタルが穏やかでも言ってほしいものは言ってほしい。それに変わりはない)名前先輩が俺を嫌いだということはまず、無いとは思ってはいるが。何の確証もなかった。名前先輩がそのようなことで恥らうような性格でないことを俺は知っている。先程、名前先輩が持ってきてくれた、オレンジジュースに口をつけるとカランと氷が、音をたてて形崩れた。



「先輩、名前先輩って俺の事本当に好きですか?」ストローに口をつけたままの状態で不貞腐れたように言ってみた。こんな態度取ったのは初めてだったので少々不安だったが、先輩は想像通り目をまん丸くさせていた。円らかな双眸には俺が移り続けているがやがて、渇きを防ぐようにしばたたかせた。一瞬掻き消える。やがて「勿論」とだけ言ってにこりと微笑んだ。足りない、正誤は兎も角として、それじゃあ足りない。俺の心が報われないと言っている。俺は少なくとも色々なリスクを想定して先輩に聞いたのに。「……それじゃあ、わからないです」聞き分けのない子供の様に、駄々をこねるように。もう一度別の回答を導き出そうとした。



「なんか、今日の凪沢君変じゃない?」「変?ああ、変かもしれないですね。最近少し不安に成る事が多いんですよ」「凪沢君が?!珍しいね」「名前先輩が関与しています」そう先輩がはっきりと俺に対して好きだと言ってくれれば俺の気持ちは浄化されて、いつも通りの俺に戻ると思うのだ。殆ど上辺には出てこないけれど内部で崩壊を起こさないために必要な事。先輩の顔を伺いながら、言った。「名前先輩は俺のこと好きですか?」「……、」躊躇うように言葉を詰まらせて頬を紅潮させた。その薄紅色の頬に今すぐに口づけたくなったけれど今は、駄目だと強く自制した。(少なくとも先輩の言葉を聞くまでは駄目だ、自分)



「す、好きだよ」長い事溜めていたが、水が押し出されるように言葉が流れてきた。「……良かった、」俺の独り言のような小さなつぶやきが名前先輩にも聞こえたようで切なげに細めて、俺を見やった。「……不安がらせていたんだね、」「ええ。たまにでいいので、言ってくれませんかね。俺を好きだって、」別に俺は無理な要求をしているわけではない、例えば毎日愛の言葉を囁け、だなんて敷衍させて言っているわけではないのだ(大体それではあまりにも言葉の重みが無くなってしまっている。そんなペラペラの紙のような言葉を聞きたいわけではないのだ)。そう、たまに。俺の中の名前先輩が枯渇してしまい、俺が渇望するときにだけ言ってくれればいいのだ。俺を安心させる魔法の言葉で。



「名前先輩、俺も言い忘れていました。好きですよ」全てを言い終わった後に、お預けを食らっていた犬状態だった俺は、名前先輩の桜色に染まる頬に口を寄せた。思いのすべてを言葉には出来ないけれど、俺は先輩が大好きでたまらなかった。ただ、それだけ。名前先輩が理解してくれれば俺は救われた。


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