無題



心が狭いとか思われたくなくて、必死に取り繕った笑顔は自分で言うのもなんだが、恐ろしく不自然なものだったと思う。名前が俺の顔を見て、引き攣った。「岬、もしかして嫉妬とかしている……?」見透かしたように俺のことを見てきた。俺の心はお察しというわけだ。というか……校内で俺が嫉妬深いと何故か知れ渡りつつある(名前関連限定で)。俺の心が狭いとでも言いたいのか。だって、実際問題面白くないんだ!苛々する。「ま、まさか。……そんなことで一々、嫉妬していたらきりが無いし、」ギリギリ爪が食い込むのも気にせずに、拳を作る。嘘だ。俺は嫉妬している。腹が立って仕方がない。その男を血祭りに上げてやりたい。俺を嫉妬させたくて、わざと他の男の話をしているとしか思えない。畜生、その男が豆腐の角に頭ぶつけて死ぬよう呪ってやる。俺にとっての一番は名前なのに、名前の心には沢山の人間が居るのかと思うと悔しい。癇癪を起こしたりするわけではないが……。やはり、一番に考えて欲しいのは俺のことだと思う。だって、俺の頭の中は名前で一杯だ。馬鹿みたいだと自分でも思うので他人もそう思っているだろう。



「岬、なんか顔怖いよ。私、岬と楽しかったことを共有したかっただけなんだけどな……」「楽しかったこと……?」「そう。友達とあった、楽しいこととか……ね」穏やかな笑みを湛えながら口を開いた。俺は一瞬息を飲み言葉を失った。あまりにも綺麗に微笑むものだから。何もかもを忘れてしまった。「……そっ、か。でも、俺は名前のことのほうが聞きたいな」「え?……私?」思ってもみなかったことを言われたせいか、円らかにしたあとに瞳を伏せた。「うーん……」一頻唸ったきり、腕を組んで考え事をしているようだった。俺はそんなに難しいことを言ったのだろうか。ただ、名前のことのほうが知りたいなーと思っただけなのだが。名前の好きなものとか、嫌いなものとか……色々知りたいと思う。俺だけが知っているものとかあればいいと思う。(それってなんだかとっても特別な感じ)


思案しているようで、名前の意識から俺は隔絶されていた。放置か……。俺はマゾっ毛ないから、あまりこういうプレイは望ましくない。もう少し構ってくれないだろうか……。悶々と考えていたら、名前がようやく顔をあげた。心なしか先程よりも頬がピンク色に染まっていた。「……私の頭の中は岬でいっぱいで、岬の話ばっかりになると思うんだけど……。それでもいい?」悪戯に笑う彼女にしてやられた。そんなの俺も、同じだ。いわなくてもわかるだろうけど。



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