君が欲しいと笑うから



本当に気持ち悪すぎるので注意。ゴミ漁りとか性描写を匂わせる。15推くらい。悪意がユンユンしています。

別パターン



最初は彼女の不要になったものだけでも満たされていた。名前の使った割り箸、それから……名前の捨てた紙屑だって俺には宝物に見えていて、漁って保存していた。名前の不要になったものだけど、名前の匂いなんかが消えていない気がして、必死にかき集めていた。そう、最初はそれだけでよかった。段々と俺の、収集はエスカレートしていった。……名前が捨てたものだけでは満足がいかなくなってきた。だって、所詮それらは、名前が不要になったもので……名前に必要とされなくなってしまったゴミなのだから。俺は現在名前が必要としているものが欲しくなった。名前の消しゴムをとった。名前が体育の授業のとき使ったジャージをとった。俺の宝物には違いがないけれど……、足りない。名前のすべてが欲しい。



それでも、暫くは名前の不要になったもので俺は耐えていた。俺はずっと厭らしい妄想を抱えて、妄想の中で凌辱を繰り返していた。名前に愛されたい、名前の体が欲しい、名前に話しかけてほしい。崩壊はあっという間だった。「霧野君、次の国語の教科書忘れちゃった。一緒に見てもいい?」後ろの席の名前が困ったように「今日は隣の男子、風邪で休みみたいでさ」と、言って隣をちらりと見た。普段あまり、話しかけてこない名前に驚きを隠せなかったのと同時に俺の心は舞い上がっていた。「あ……。ああ、勿論。そっちの席に行くよ」優しいクラスメイトの顔をすれば、名前は俺のことなんて疑うわけがない。「有難う」って、お礼を言って笑顔を浮かべてくれる。あああっ!俺だけのものにしてしまいたい!名前の隣の主のいない席の椅子を引いて座る。俺の机と違って少しだけ低い。名前が「そういえば、霧野君とあんまり話したことなかったね」と言った。「もっと、気軽に話しかけてよ」「うーん、なんか霧野君って、モテるから……話しかけにくくて」と苦笑して、俺の顔を見つめた。その仕草が、行動が俺の胸に焼き付く。



「そんなことないよ」「あるよー。霧野君って顔整っているもの」本音じゃなくても、名前は俺のこと何とも思っていなくても嬉しかった。でも、他の女子にそう思われていても仕方がない。本当に欲しいのは名前だけだ。「はは、有難う」国語の時間は短く感じられた。先生の声なんか、耳にも入らなかった。ただ、ずっと視界に名前を入れて、胸をときめかせていた。真剣に見つめる先には、中年の先生の姿があった。



「ふぅー、有難う。霧野君は優しいね。大した話したこともないのに」「そんなことないよ」
俺が、名前と話していたら割り込むように神童が俺を呼んだ。「霧野……、さっき先生が資料室に資料を戻しに行けって言っていたぞ。日直だろ?」……、そんなこと言われたっけ。と俺が首をかしげると神童が顔をしかめて「しっかりしろ」と俺に言った。先生の話が耳に入っていなかったから言われていたかもしれないし、言われていないかもしれない。あまりにも曖昧であやふやだ……神童が嘘をつくとは思えないから多分、本当なのだろう。俺は「はぁ」と短く溜息を零して席を立つ。教卓に置かれた資料を目にやると随分と量がある。内心、げ……。と思った。天国の後は地獄、か……。隣の席の女子は薄情にも、逃げてすでにいなくなっていた。俺一人で運べというのか。



「あ、霧野君……私も手伝うよ。さっきのお礼に」名前はそんな女子とは違って、優しい子だった。細い腕で、資料の一部を持ち上げる。ずっしりとしていて、重たいらしく名前が苦しげに顔を歪めた。「有難う。でも、そんなに持てないだろ?俺は体力あるからもうちょっと持つよ」名前の上に重なっていた資料を俺のほうに移した。そのまま、教室の開けっ放しのドアを潜り抜けて、廊下を歩き始める。少し遅れて俺の後ろから名前がちょこちょことついてくる。距離が離れないように、ゆっくりとした歩調で歩く。



資料室までたどり着くと立ち止まる。資料を両手で抱えながら足で資料室のドアを蹴る。普段はこんなことしないけれど、両手が塞がっている。薄暗く電気がついていない人気のない資料室に入る。名前も入るとドサリと重たい音とともに、それを備え付けられていた机に置いた。びっしりと並んでいる、資料の中に運んできた資料を一緒にする。「……さ、帰ろうか。霧野君」名前が額にうっすらとかいた、汗をぬぐって笑う。俺はあたりを一度目でぐるりと見まわした。此処には誰もいない。その上、物じゃない名前自身がいる。……俺の中にあったもの。それが、大きく肥大していた。出口に向かう名前の腕を引いた。それから、強い力で戻してドアの鍵をかけた。



先ほどの衝撃で、地面に座り込んだ名前が恐怖に染まった瞳で俺を見上げていた。乱れた制服のスカートから白い太ももが、晒されていた。「霧野、く……ん?」足りない、足りない、足りない。もう、名前の不要になったものだけじゃ嫌だ。名前の匂いはすぐにかき消されてしまう。所詮、名前の大事なものなんかじゃなかったから。名前の持ち物でももう、限界だ。だって、それらは結局名前のものだっただけで名前なんかじゃない。大きく開いた瞳に俺の背中の、ドアを映した。絶望に塗れた世界は、灰色で滲んでいた。



title 箱庭

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