仮想現実



この作品中のみ、;やw、絵文字、記号を使います。これに限ってはハンドルネームのほうがいいかもです。ネットゲーム(チャットとか)を表現するためです。苦手な方は避けてください。わりとえげつないんで、オンラインゲームしている人は不愉快になる可能性大。これ、の対。


この世界は、とてもとても幸せな世界。ようこそ、現実の嫌なことは全部忘れよう。昼も夜もこの世界は穏やかに流れる。一日に幾度も昼と夜を繰り返すのだろうか。朝が来て、また昼が来て、昼が来たと思ったら夜が来る。目まぐるしく変わるその世界に目を奪われる。現実のあの不健康な体とは違う勇敢な勇者が立派な鎧を着て、大きな剣を背負っていた。ファンタジックな衣装を纏った人々が俺の横をそ知らぬ顔ですり抜けていく。その姿は様々で皆、自分が好きな姿をしている。ただひとついえることは、現実の日常では有り得ない姿だということ。(……あ、コスプレとかする人は除く)人ではないものや、化け物なんかがこの世界のそこらかしこに沢山、現れる。この世界は幸せなんだ。wが溢れている。たまに揉め事もあるけれど、また一から作り直せば何の問題もない。



ピロリン、と電子的な音がパソコンから聞こえてきた。チャット欄に目を向けると友達登録している、名前からメッセージが入っていた。俺に個別で会話をしてきたようだった。
名前:やほーい!ようやく85レベルになったぞー!新しいクエできるぞー(`・ω・)ノ
可愛らしい絵文字とともに発せられた、その内容に俺は口元を緩めた。彼女との会話は、楽しい。最近は専ら、彼女に会いたいがためにネットゲームをしているようなものだった。待っていたよ、という言葉は気恥ずかしいから言わないけれど。
イツキ:なんだよ、俺はもう100だぞ〜ww
俺の手が、そう打つ。タイピングなんてお手のものだ。見ないでも打てる。こんなこと、数年も続けていれば必然的にそうなるんだろうな。



名前:えー、頑張ったのにー……。早すぎだw廃人め!w
廃人、俺のことをそう呼ぶ人間が居るのを知っている。それが悪意を含んでいるものもいるということも、冗談半分で言う、悪意の含まれていないものの二種類があるということも。因みに今回の場合は後者だ。名前は俺に悪意のある言葉なんて言わない。
名前:今日も仕事帰りなんだから、私の方が遅いのは仕方がないしー。(´・ω・)
イツキ:そうだったな。お疲れ様w



名前は仕事をしているらしい。モデルをやっているとかなんとか。かなり美人なんだろうな。現実だったら俺見たいのなんか相手にされるわけがないのにそれでも、目に見えないからこうして対等な立場を築けるのだ。俺は、対等でありたくて嘘を吐いた。こんな大嘘、ばれてしまうかもしれないのにだ。現実が充実しているといわんばかりに、彼女が居るとか、今日も告白されたとか。そんな、大嘘を名前は疑わずに「へぇ。凄いねー。イツキってモテるんだ〜」といったんだ。



イツキ:レベル上げに狩りに行こうよ。
名前:でもさぁ、レベル離れたから同じ狩場じゃ不味いじゃん。経験地おいしくないよ
イツキ:別にいいよ。名前と遊びたいしw
俺がそういうと彼女は「有難う〜」と言って、俺の近くにやってきた。名前は俺と違って、魔法使いだから俺との相性は抜群だ。遠距離と近距離だからな。魔法使いらしい、ローブが移動するたびに揺れる。目の前の強そうで、イケメンな俺が大きな剣を敵に何の躊躇いもなしに叩きつけ切りつける。名前から強いね、とか賞賛の声がもれた。名前が回復魔法をかけてくれる。あぁ。幸せだ。これが、現実ならもっといいのになぁ……。



ようこそ、ようこそ、此処は幸せな世界。人々の嘘は全て現実になるんだ。いつか、この世界が終わり、なくなるその日まで。幸せな幻想に浸り続けよう。


仮想現実



彼女視点のおまけ。


イツキ君が、とても格好いい人だと聞いた。私は大嘘をついたんだ。自分の、このくだらない大嘘を信じてくれ、受け入れてくれるこの生暖かい世界が大好きだった。本当の私を知られたくなくって沢山の嘘で塗り固めていった。いつしか、この大嘘が本当になればいいのに、と何度も何度も願ったの。……そんなもの、変えられるはずが無いって、わかっていたのにね。でも、願ってしまうことをやめられなかった。



目の前にいる私は、特別。此処の私の名前は名前。現実の私とは違う。ここの私は魔法使い。強い魔法をぶっ放して敵をなぎ倒し、時には人を回復してあげられる。そんな魔法使い。ああ、イツキ君の顔が見てみたいな。でも、こんな私相手にしてくれないよね。だって、現実の私はモデルでもなんでもない。ただの、一般人。しかもイツキ君より年上でしがないOLだ。どちらかといえば、美人ではない。此処は二十四時間休むことなく、目まぐるしく変わる世界。現実を忘れさせてくれる、幸せな仮想。



本当に、此処の世界は一体どのくらいの嘘で出来ているんだろう。否、全て嘘なのかもしれない。だけど、私もその嘘の一部なのだから、気にすることなんてひとつもないわ。とても、心地よいのだもの。嘘に塗れた、幸福な世界こそが此処だと知っているのだから。ああ、いつになったら、終わるのかしら。いつになったら、現実に帰れるのかしらね。

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