宇都宮



よく晴れていて、曇り空もない。空にはポツンと小さな月が浮かんでいるだけ周りは静寂に包まれていて、家々も小さな明かりを灯しているだけ。時だけが穏やかに過ぎてゆく。バケツに放り投げられた終った花火たちが、花火をしている名前たちがもうじき片付けに入るだろう事を物語っていた。「……あ、名前さん、まだ線香花火残っていますよ!」虎丸の手には線香花火が数本握られていた。「本当だ〜。じゃぁ、締めは線香花火だねー」虎丸から二本ほど線香花火を受け取るともうだいぶ溶けて小さくなってしまった蝋燭の炎に近づけた。虎丸もそれに続いて一本近づける。



「あ、そうだ。どっちが長く落とさずに居られるか勝負しませんか?」「んー。いいよ」そうと決まると話は早い、そろそろと風が来ない場所に移動して身動きをとめ、息を潜めた。虎丸も近くに来た。戦法は一緒らしい。また、あたりが静かになる。線香花火の火の玉が大きくなる。ブワッと、大きな風が吹き、隙間から風が入り込んでくる。必死に空いている手で風を押さえるも虚しく、線香花火の火の玉がぽたりと地面に落ちた。赤かったそれは、段々と色を失いアスファルトと同化した。



「あっちゃー……虎丸君はまだ終ってない?」終った線香花火をバケツに入れて虎丸の後ろに立つ。どうやら、まだ終ってないらしい。勝ったのがわかったのか虎丸は不適に笑った。「うわ、負けたのか……。悔しいなぁ」「負けた名前さんには罰ゲームがありますからね!」「……ちょ、何それ聞いてない……」しどろもどろになりながら何かを企んでいそうな虎丸から離れようとすると虎丸も終った線香花火をバケツに投げ入れ名前に顔を近づけた。「そうですね、罰はキス一つでどうですか?」

線香花火

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テーマ「人外ファンタジー」
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